5ばんしょうぶ

 美沙は海と明日香からそれぞれ深々と頭を下げられて、とある戦いの見届け人を引き受けることになりました。

 今回の海と明日香が行うのはつい数日前に行われ、昨日と今日で返却された後期中間試験の点数を国、数(数1と数2の合計点)、英、社、理(化学と生物の合計点)で争う五番勝負でした。

 美沙個人としては五番勝負にあまり良い思い出が無いので断ろうと思わなくは無かったのですが、二人に平等に勉強を教えた身として結果は気になってしまったので見届け人を引き受けることにしました。

「まずは、国語から」

 最近、公私問わずたまり場となっている海の自宅を戦いの舞台として、美沙は事前にそれぞれから渡されていた点数付きの答案用紙を手に取り点数を読み上げました。

「芹沢海   78点

春風明日香 74点」

「よしっ!」

 美沙がそう言うと、一勝した海が握り拳を作って喜びを表現していました。

「続いて数学」

 たった今まで勝利を喜んでいた海でしたが、苦手な数学という事もあり表情が曇っていました。

 一方で明日香はというと、海同様に数学は苦手分野なはずでしたが、どことなく余裕があるように感じられました。

「芹沢海   数1 67点 数2 81点 合計 148点

春風明日香 数1 82点 数2 71点 合計 153点」

 自身があったらしい明日香は小さく頷きながら僅かに微笑み喜びを噛み締めていました。

「まだ一勝一敗」

「次は英語」

 英語に関しては二人とも得意でも不得意でもない科目というだけあって美沙の予想ではどちらが勝ってもおかしくは無いと思いました。

「芹沢海   74点

 春風明日香 73点」

「あと一勝」

 答案を見てみると、明日香は長文問題でピリオドを打ち忘れたことによる減点が二か所ありそこで2点を取り損ねていました。

「次は社会」

 何故だか美沙まで緊張してきてしまい、手に汗をかき始めたので美沙は一度手汗を拭いてから答案用紙を手に取りました。

「芹沢海   88点

 春風明日香  90点」

「やった!」

 海がここまででの最高得点を出したので歯を食いしばっていた明日香でしたが、すぐにその最高得点を塗り替えたことで明日香の口から喜びの声が小さく漏れ出てきました。

「最後は理科」

 海も、明日香も、そして美沙も息を飲みました。

「芹沢海   化学 78点 生物 74点 合計152点

 春風明日香 化学 72点 生物 77点 合計149点」

 美沙が結果を告げると、見事三勝した海は拳を高く上げて声にならない喜びを表現して、三敗してしまった明日香は両手で顔を覆って落胆していました。

「今回の五番勝負は僅差で海の勝ち」

 今回の勝負には関係が無かったので言いませんでしたが、海と明日香の後期中間試験の合計点は海が150点、明日香が149点と僅か一点差で海の勝利でした。

 本人には言いませんが、明日香が二か所のピリオドをしっかりと打ってさえいれば五番勝負でも合計点でも明日香の勝利となる結果でした。




柚鈴 ミササ!

美沙 どうしたの?

柚鈴が写真を送信しました。

美沙 数1と数2が100点、それ以外は50点。

柚鈴 やったよ!

美沙 こっちはこっちで凄かったけど、これもある意味凄いね。

柚鈴 ちなみにミササはどうだった!

美沙 言うまでもなく、全教科満点だけど。

柚鈴 すごっ!

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