そふぁべっど

 ドンドンッとここ最近では最も大きな音で鳴った生徒会室の扉が開かれると、高校生にしてはやや老け顔の男子生徒が不気味なほどさわやかな笑顔で立っていました。

「会長、頼まれていたソファベッドが完成したのでお持ちしました。良ければ中まで持って行きましょうか?」

「良いのか? それならお願いしたい。窓際に置いてくれ」

「了解。八雲、片方持ってくれ。窓際まで持って行くぞ」

 日曜大工同好会の会長を務める佐々山薫先輩は同じく副会長の王子八雲先輩と共にソファベッドを腰の高さまで軽々と持ち上げて生徒会室の中へと運んできました。

「笑舞、凄い出来栄えだね」

「日曜大工の域を超えているとしか思えないのですが」

「いやいや、二日も時間を貰ったんだからこれくらいの出来じゃないと。なぁ八雲」

「そうそう。気に入らないようならいつでも改修するので」

 そう告げて生徒会室を出て行った佐々山先輩と王子先輩でしたが、数秒後にもう一つソファベッドを持って生徒会室に戻って来ました。

「海、二つも頼んだの?」

「無駄にスペースがあったからつい」

「明日香に怒られても知らないから」

 美沙先輩にそう言われた会長はバツが悪そうな顔をしていました。

「会長、設置終了したのでオレたちはこれで」

「連絡して頂ければいつでも修理しに来るので」

「それじゃ、失礼します」

 日曜大工同好会の佐々山先輩と王子先輩が帰ると、ソファベッドが運ばれてきた時からキラキラと目を輝かせていた柚鈴先輩と小雨先生がソファベッドに飛び乗りました。

「凄いよ、海君! これ凄い!」

「何が凄いのか全く伝わってこないな」

「美沙さんも、座って見てください。これはもう言葉が出ないですよ」

「うわぁ。ナナちゃんと笑舞ちゃんも座ってみて」

 美沙先輩にそう言われてしまった以上は従わない訳にも行かず、ワタシとナナもソファベッドに腰を掛けました。

 一度腰を掛けてしまうとしばらく立ち上がりたくなくなるほどのクッション性があるソファベッドには三人が腰を掛けても余裕があるほどのスペースがあり、背もたれを倒すとセミダブルサイズのベッドになりそうでした。

「どうだ? 悪くないだろう?」

 会長の問いにワタシたちは大きく首を縦に振りました。



生徒会議事録

 昼休みにここで仮眠をしたら起きる自信が無いな。 芹沢

 やろうと思えば給湯室でご飯も作れるし生徒会室に住めちゃうね! 柚鈴

 わかっていると思うけどやらないでよ。 美沙

 もちろんわかっていますよ。 小雨

 小雨先生……。 笑舞

 小雨ちゃん先生。 七海

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