もでる

「失礼します」

 数度のノックをして生徒会室へやって来たのは手芸部の部長を務めている榊美波先輩でした。

「柚鈴さん、先日撮影した写真を冊子にして頂いたのでお持ちしました」

「先日って言うと、古着撮影会の時だ!」

「はい。部員にとても好評でしたのでお時間があればまたモデルをお願いしたいのですが」

「勿論!」

 笑顔の仮面をかぶって淡々とそう告げる榊先輩に対して、心の底からあふれ出す笑顔で返答する柚鈴先輩はあまりに対照的でした。

「それでは、私はこれで失礼します」

 目的を済ませた榊先輩は柚鈴先輩に一礼した後でワタシたちにも一礼をして生徒会室を去りました。

「ユズリン、良かったらそれ見せて欲しいな」

「ナナもモデルをしている柚鈴先輩見てみたいです」

「はい、どうぞ!」

 普段から運動部の助っ人や今回のモデルとしての撮影で見られることに慣れているからか、柚鈴先輩は恥ずかしがる様子を一切見せずに冊子を美沙先輩に渡しました。

「見やすいように机の上に置くね」

 美沙先輩はそう言うと、見るからに気になって仕方のない様子のナナ、言葉にはしなかったものの気になっているワタシ、作業をしているフリをして美沙先輩の方をチラチラと見つめ気になっている様子の会長の為に机の真ん中に冊子を置いてくれました。

「やっぱり柚鈴先輩はどんな格好をしていても写真写りが良いですね」

「そんな事は無いよ! 衣装を用意してくれた手芸部と撮影をしてくれた写真部のおかげだよ!」

 ナナの言う通り、どの写真も柚鈴先輩と衣装どちらも良い塩梅で互いを引き立て合っていてとても自宅では年中半袖で過ごしているような人物には見えませんでした。



生徒会議事録

 十一月も今日で終わりだな。 芹沢

 今年もあっという間だったね。 美沙

 あと三週間で冬休みだよ! 柚鈴

 その前に定期試験があるのをお忘れなく。 小雨

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