じょしちゅうがくせい
帰宅途中の事だった。
「お尋ねしたいことがあるのですが、お時間大丈夫でしょうか?」
女性の声が聞こえて来て、地面を見て歩いていた俺は周囲を見渡した。俺の周りには声を掛けて来たであろう少女と俺以外に人の姿は無かった。つまりこの少女は俺に声を掛けて来たのだろう。
「ま、まさかこの女子中学生、俺に声を掛けて来たのか? まさか、そんなことあるわけないか。こんな美少女が実在する訳無い。俺の妄想だろう。と思っていることと思いますが、残念。さやちゃんはここに存在しています」
「思ってないわ!」
つい、明日香や美沙と会話をする感じで見ず知らずの女子中学生に本気でツッコミをいれてしまった。
「そうですか。美人は飽きるほど見て来たから今更美人の女子中学生が現れたところで動じないという事ですね。流石だな、明才高校」
「そんな訳無いだろ……とも言い切れないな」
明日香も美沙も柚鈴も……七海に笑舞だって。千景先輩や為奈先輩、風和先輩も……生徒会役員の美人率高いな。
「そんな事はどうでも良くて、どうして俺が明才高校の生徒だと?」
「制服を見れば一目瞭然。お茶の子さいさいです。まぁ、明才高校初の男子生徒会長さんって事もさやちゃんほどの情報通なら知っていますが」
「何でそんなことまで」
「パンフレットに載っています。さやちゃんが知ったのは明才高校のホームページからですが」
自分をさやちゃんと称する女子中学生は俺に明才高校の最新パンフレットを差し出してきたので拝借して中を見てみると、学園長や校長先生の写真と共に生徒会長として俺の写真も掲載されていて、いつだったか報道部の単独インタビューで語った言葉が載せられていた。発行していたのは案の定報道部だった。
「じゃあ、君は明才高校を受験予定の子?」
「そうですね。まだ確定ではないですが、そうなる予定です。なので、明日の学校見学会にも参加をします。これは決定事項です」
「そっか。俺個人の感想だと、明才高校は楽しい学校だよ」
「なるほど、具体的には?」
考えなしでの発言だったので出来れば掘り下げて欲しくは無かったが、生徒会長であると知られてしまっている以上は答えないわけにもいかないので俺は必死に具体例を探した。
「一番は生徒主体で学校生活が作られていることかな」
「パンフレットでも言っていたくらいですからね。他には?」
「とにかく校舎が広いことかな。クラス自体は他の高校と同じくらいか少し少ないくらいではあるけれど、本校舎とは別に本校舎の半分くらいの大きさの部室棟があって今はその校舎に合宿用の宿泊施設が建築されているから君が入学する頃には部室棟は本校舎と同じくらいの規模になっている予定だったはず」
「それはパンフレットには載っていない情報ですね。ホームページで完成時期の情報までしっかりと見ましたが」
完成時期に関しては俺もつい最近知ったことだが情報が早いな。確かホームページの管理も報道部だったか。
「他にも色々とあるけど、全部伝えたら明日の見学会の楽しみがなくなると思うしこれくらいで良いかな?」
「そうですね。明日の見学会で『あ、こんなものか』と感じてしまいたくはないので」
女子中学生がどこかで見覚えのあるアイドルのような笑顔を見せると、遠くの空からカラスの鳴き声が聞こえて来た。
「もう遅いし、駅に行くなら送って行こうか?」
「御心配はお呼びじゃないです。お姉ちゃんとゆかいな仲間達と待ち合わせをしているのでここでお別れとしましょう」
「そうか、気をつけて。また明日会えたらよろしく」
「はいよろしくお願いする前に一つだけ。烏居爽香。さやちゃんの名です。名前だけでも覚えて帰ってください。それでは失礼」
烏居爽香と名乗った女子中学生はたった二メートルしか離れていない俺に大きく手を振るとそそくさと去って行ってしまった。烏居爽香……どこかで聞き覚えのある名前だが、覚えておこう。
海 烏居彩香だ!
明日香 いきなり何? 明日も生徒会でしょ? 早く寝たら?
海 帰りに会ったんだよ!
海 アイドルで『rainbow』の烏居彩香そっくりの女子中学生に!
明日香 他人の空似 お休み
海 もう少し食いついてくれても良いだろ お休み
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます