ういしまけのきゅうじつ

 生徒会の活動がお休みの土曜日でしたが、ナナはいつも通りの時間に目が覚めてしまいました。

 ふと、いつかの土曜日を思い出したナナはベッドから出て部屋のカーテンを開けて向かいの公園を見てみました。あの日と同じように海先輩が居れば良かったのですが、そんな事は無く無人の公園がナナの目に映りました。

「さて」

 今日は特に用事があるわけではありませんが、パジャマのままでいると一日中だらけてしまいそうなので着替えることにしました。

「ふんふんふ~ん」

 ナナは自然と鼻歌を歌いながら新品のお洋服に袖を通しました。普段なら新品のお洋服に袖を通すくらいでここまで浮かれたりしないナナですが、今着ているお洋服は数日前のナナのお誕生日の日に笑舞がプレゼントをしてくれた服なので嬉しさが溢れ出してしまいました。

「そうだ!」

 せっかくなので美沙先輩がプレゼントしてくれたファンデーションを使ってお化粧をしてみることにしました。

 お化粧は得意という訳ではありませんが、最近は動画サイトでナナと同い年ぐらいの女の子がお化粧動画を投稿しているのでそれを参考にして普段とは少し違うメイクをしてみました。

「ふふっ」

 鏡を見てつい微笑んでしまったところで、ナナはこれから外出する用もないことに気付いてしまいました。

「誰かいるかな?」

 一番上の七瀬お兄ちゃんはアルバイトで留守にしているかもしれませんが、二番目の七也お兄ちゃんと三番目の七朝お兄ちゃんは大体家に居るはずなのでナナは部屋を出てリビングへ行ってみました。

「七海、おはよう。おめかしなんてしてどこかに出掛けるのか?」

「おはよう、七朝お兄ちゃん。どこにも出かける用事は無いけど、七朝お兄ちゃんはこれから用事ある?」

「おれか? 例えあったとしても七海の為ならキャンセルするよ」

「用事はなさそうだね。ナナとお出掛けしない?」

 ナナがそう提案をすると、リビングのソファに寝転がってスマートフォンを見ていた七朝お兄ちゃんは大きく目を見開いて持っていたスマートフォンを床に落としました。

「良いのか?」

「うん。七瀬お兄ちゃん七也お兄ちゃんも用事がないなら一緒に行きたいけど」

「七也兄なら暇しているはずだけど、七瀬兄はバイト行っちゃったからな」

「そっか、取りあえず七也お兄ちゃんに声掛けてくる」

 ナナはそう言って七也お兄ちゃんの部屋へと向かいました。

「七也お兄ちゃん、入るよ」

「話は聞こえていた。オレの準備は出来ている。さぁ、どこへ行こうか?」

 ナナがドアノブに手をかけるよりも早く部屋の扉を開いた七也お兄ちゃんは既に着替えを済ませて出掛ける準備を万全にしていました。

「映画を観に行きたいな」

「映画だな。観たい映画は決まっているのか?」

 そう言うと七也お兄ちゃんはすぐに今公開している映画の一覧をスマートフォンの画面に映してくれました。

「色々観たいものがあるけど、今日はこれの気分かな」

「これか。チケット取るけど、時間帯はオレの方で決めても大丈夫か? 座席も希望があれば言ってくれ」

「良いよ。座席は後ろの方が良いな」

「オッケー」

 七也お兄ちゃんはとても素早くスマートフォンを操作して映画のチケットを取ってくれました。

「七海、七也兄、おれの方は準備できたけど」

「七朝お兄ちゃん、映画に行くことにしたよ」

「七朝のチケットも取っておいた」

「ありがとう七也兄。それじゃあ、出発するか」

 ナナたちは七朝お兄ちゃんの運転する車で映画館へと向かいました。



七海が画像を送信しました


七海 お誕生日プレゼントコーデでお出掛けしました。

笑舞 ワタシのプレゼントした洋服を着てくれたのね。ナナに良く似合っている。

柚鈴 帽子はワタシのプレゼントだ! ところで、一緒に映っている男の人って!

美沙 もしかして、ナナちゃんの彼氏?

七海 えぇ~!? そんな訳無いじゃないですか! お兄ちゃんです。

笑舞 兄妹仲が良いのね。

七海 お兄ちゃんたち凄く優しいよ。

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