ぷれぜんと

「美沙、ちょっと寄り道しても良いか?」

 美沙と海の二人きりで生徒会で使う消耗品の買い出しを済ませて大型ショッピングモール『ユグドラシル』の中を歩いていると、突然海が足を止めてそう呟きました。

「買い物は済んだし、時間もあるから構わないけど」

 美沙も足を止めて海のもとへ戻ってみると、海は海には似合わない可愛らしい装飾の施された雑貨屋さんの前に立っていました。

「寄り道って雑貨屋さん?」

「あぁ、少し見たいものがあるからさ。美沙の意見も聞きたいから着いて来てもらえるか?」

「それは全然かまわないけど」

 一人だけでは恥ずかしいからなのか、美沙を誘って店内へと入った海は美沙の位置を逐一確認しながら店内をぐるりと回って最終的に海のイメージに似合わない可愛らしくもあり大人っぽさもあるデザインの水筒が置かれたコーナーの前に辿り着きました。

「へぇ、知らない間に水筒も色々な大きさや形のものが出たみたいだね」

「そうだな。美沙ならどんな水筒が使いやすいと思う?」

「そうだなぁ、あんまり大きいと持って行くのも使うのも不便じゃないかな? だからと言って小さすぎても困るけど。でも、このお店で一番小さいサイズだとサイズ自体は小さいけど美沙みたいに小さい手でも持ちやすいし、飲み切りやすい用量だと思うな」

「なるほど。美沙に着いて来てもらったのは正解だった」

 そう言って海が手にしたのは、海のイメージではない水筒が並ぶ中で最も海のイメージに合わないデザインの水筒でした。

「ちょっと会計してくるから待っていてくれ」

「うん、わかった」

 店の外に出て海の買い物を待っていると、海はとてもきれいに、可愛く包装された袋を持って戻って来ました。

「あれ、海が自分で使う用じゃないの?」

「いや、俺がこんな可愛らしい水筒使っていたら引くだろ。七海の誕生日プレゼントだよ」

「ナナちゃんの?」

 そう言われて美沙は納得しました。

「言われてみれば、海が選んだ柄はナナちゃんが好きそうだよね。でも、なんでナナちゃんの誕生日プレゼント?」

「なんでって、11月の3日が七海の誕生日だからだろ」

 美沙としたことが、自己紹介の時にしっかりと誕生日を聞いていたはずなのにすっかり記憶から抜け落ちてしまっていました。

「海、美沙も寄り道して良い?」

「そりゃ、もちろん」

 海の許可をもらった美沙でしたが、流石に海と同じお店で誕生日プレゼントを買うのは気が引けてしまったので別の雑貨屋さんに寄って誕生日プレゼントを購入しました。



生徒会議事録

 急な連絡で申し訳ないが、11月3日は朝から生徒会室のボイラー点検があるらしく、午前中は立入禁止らしいから午後一時に集合でよろしく頼む。 芹沢

 わかったよ~ 美沙

 了解です! 柚鈴

 わかりました。 七海

 かしこまりました。 笑舞

 私はそんな話を聞いていませんが、海さんが言うのなら間違いないのでしょうね。 小雨

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