ひみつのでんわ
いつもと同じ時間に目を覚ましたナナはスマートフォンのアラーム機能を止めたところで今日が生徒会の活動がお休みの日であることに気が付きました。
「む~」
二度寝が出来れば良いのですが、完全に目が覚めてしまったナナは唸り声をあげながら充電器と繋がったままのスマートフォンの画面を見つめました。
「朝早いし迷惑だよね」
メッセージアプリを開き、生徒会役員全員が繋がっているグループにメッセージを送ろうと思いましたが、折角の休日に朝早くからメッセージを送るのは迷惑だと思いナナはメッセージアプリを閉じました。
「暇だなぁ~」
部屋を出れば三人のお兄ちゃんの内の誰かがナナを構ってくれるとは思いますが、今はお兄ちゃんに構ってもらいたい気分ではありませんでした。
何をするにもベッドの上に寝転がっていては意味がないのでナナはゆっくり起き上がり、白色の水玉模様が入った水色のカーテンを開けました。
窓の外は雲一つない青空が広がっていて、家の前にある公園では少しずつ黄色く色づき始めたイチョウの葉が僅かに揺れていました。
「あれ?」
ふとイチョウの木の下に目を向けると、普段は誰も座っていない公園のベンチに今日は一人のお客さんがいました。
「海先輩?」
見間違えかと思いましたが、その姿は紛れもなく明才高等学校初の男子生徒会長でナナが密かに思いを寄せている芹沢海先輩でした。
「海先輩がどうしてあそこに?」
しばらく窓越しに海先輩を見つめていましたが、海先輩は特に動くことなくただ青空を見つめていました。
五分経っても動きが無い海先輩をじっと見つめていたナナは少しの間だけ海先輩から目を離して充電器に繋がったままのスマートフォンを取りに行きました。
そして、ナナは生徒会役員に就任したその日に海先輩から教えてもらった電話番号に電話をかけてしまいました。
『もしもし?』
窓越しに見える海先輩はワンコールで電話に出てくれました。
「お、おはようございます。ナナです」
『七海か。おはよう。何かあったか?』
朝早くからの電話にもかかわらず海先輩はいつも通り優しい口調でナナに応対してくれました。
「いえ、海先輩の声が聴きたいと思っていたらいつの間にか電話してしまっていて」
『なんだそりゃ? でも、七海が電話して来てくれて嬉しかった』
「え?」
想像もしていなかった返しにナナは思わず大きな声を出してしまいました。幸い部屋の外には聞こえていなかったようでした。
『今日みたいに誰とも会う予定がない日は一人きりだからさ。人恋しくなっていた所だった』
「よかったです。朝早くに電話してしまったので、もしかしたらご迷惑だったかもしれないと思っちゃいました」
『七海の声を聞いたら元気になった』
「そうみたいですね」
スマートフォンから聞こえてくる声だけでもそう感じましたが、窓の外に見える海先輩も笑顔になっているように見えました。
『ゴメン、七海。スマホの充電切れそうだからそろそろ切っても良いか?』
「は、はい。いきなりお電話してすいませんでした。海先輩、また月曜日に」
『あぁ、月曜日に会おう』
ナナの方から電話を切って、ナナはベンチに座っていた時よりも明るい表情になった海先輩を海先輩の知らない所でそっと見つめました。
七海へ
海 朝の電話で言った事だけど美沙たちには秘密にしておいてくれ。あと、出来れば忘れてくれ。寝ぼけていて恥ずかしい事言った気がする。
七海 わかりました。と言っても、ナナも寝起きだったので記憶が曖昧ですが。
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