こもんふざい

 何てこともない火曜日の午後、今週から生徒会室に密かに設置されたお菓子置き場から各々持ってきたお菓子片手に作業と称した自己学習に時間を費やしていると、報道部の龍鵞峯一先輩が突然生徒会室へとやって来ました。

「報道部です!」

 開口一番にそう告げる龍鵞峯先輩をワタシたち生徒会メンバーはお菓子を持った手を口元で停止させながらただただ見つめました。

「あの、せめてレスポンスを頂けませんか?」

 どうやらワタシたちの反応は龍鵞峯先輩の想定外だったようで、龍鵞峯先輩は慌ててそう言いました。

「ごめん。言われるまでもなく知っていたから」

「え? 知っていた?」

「青山部長から『今からアタシの優秀な後継者である龍鵞峯一が生徒会室に取材に伺いますのでよろしくお願いします』って連絡来ていたから」

「皆さん知っていたと?」

 龍鵞峯先輩の質問にワタシたちは強く頷きました。

「そうですか。それならそれで構いません。本日、取材に伺ったのは他でもありません。今期の生徒会には未だに顧問がいないという噂を耳にしたのですが、それは事実でしょうか?」

 そう尋ねられ、ワタシは会長に視線を向けました。会長は美沙先輩に視線を向けました。美沙先輩は柚鈴先輩に視線を向けました。柚鈴先輩はナナに視線を向けました。そしてナナはワタシに視線を向けました。

「もしかして、誰も顧問がいない理由をご存じない?」

「言われてみれば……あ!」

 何かを思い出したかのようにそう叫んだ会長にワタシたちは視線を向けました。

「そう言えば、生徒会顧問は生徒会長が指名する決まりになっていたのをすっかり忘れていた」

「師匠もとい部長がそんなオチだろうと言っていましたがその通りでしたか」

「龍鵞峯さん、わざわざ知らせてくれてありがとう。俺は少し席を外すからゆっくりしていってくれ」

 会長はそう言うと慌てて生徒会室を飛び出していきました。



生徒会議事録

 皆申し訳ない。顧問の先生をお願いしてきた。明日紹介する。 芹沢

 あとで明日香に嫌ほど怒られるだろうね。 美沙

 その時はナナも一緒に謝ります。 七海

 ワタシも謝るよ! 柚鈴

 謝罪前提なのですね。 笑舞

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