第13話

 俺についに安眠を手に入れた。

 当然レナのことを意識しなくなったわけではない。当然!!


 大事なことなので2回言いました。当然


 じゃあどうしたのかって?ふふふ

 俺は気付いてしまった。


 初日、レナが隣にいたにもかかわらずぐっすりと眠ることができたのは、初めて魔物と戦って疲れていたからだ。だから、動けなくなるギリギリまで疲れることにした。


 短剣の訓練をしないといけなかったのでちょうどいい。この短剣、刀身が30センチほどとレナに借りていたものよりも長い。その分扱いも難しくて、長剣の訓練しかしてこなかったし、慣れるには時間がかかりそうだ。


 1ヶ月間テミア周辺の討伐クエストを受けては、疲れるまで訓練。

 このルーティンを繰り返した。


 と言っても、この辺りには角ウサギにゴブリン、グレーウルフと言った低級の魔物しかでない。最初の方は危ない場面も何度もあった俺たちだが、最近は危なげなく戦えるようになってきた。

 短剣にも慣れたしね。


 今日もいつものように討伐クエストを受けようと、依頼書をジョーさんの所に持っていく。


「兄ちゃん達、そろそろダンジョンに行ってみても良い頃合いじゃねえか?」


「ダンジョンか、そういやそうだな。もうこの辺の魔物には飽きてきたしな」


「そうだな、兄ちゃん達なら無理しなければダンジョンに行っても無事帰ってこれるだろう。もちろん今すぐってわけじゃねえぞ?ライエル。十分準備をしてからって話だ。どこのダンジョンに行くかも話し合って決めるこったな。」


「わかってるよ、おっちゃん!!お前らはどうなんだよダンジョン行ってみてえだろ?」


「そうね、そのためにこの街に来たわけだし」


「僕も行ってみたい、かな?」


 3人はダンジョンの探索に肯定的なようだ。もちろん俺も行ってみたい。ダンジョンに行きたくねえ男は男じゃないっておばあちゃんに教わったしな。この世界のおばあちゃんはみたことすらないけど。


「よし!ジョーさんダンジョンごとの特色を教えてもらっても良いですか?」


 一応知ってはいるが、確認がてら聞いてみる。


「おう、勿論だ。それも大事な仕事のうちだしな」


 そう言ってジョーさんはテミア周辺の3つのダンジョンについて教えてくれた。


 情報は師匠に聞いていたのとほとんど同じ内容だ。


 ここテミアから少し西に行った先にあるダンジョンには、ゴブリン系。

 東に行った先には、ウルフ系。

 北に行った先には、低級の魔物がランダムに出てくる。


 階層は西と東は地下30階、北は45階層まであり、3分の1ずつ上層、中層、深層と分かれており、下に行くほど魔物の数は増え、強くなる。


 冒険者の存在理由の1つとして、ダンジョンの魔物を間引く。というのがある。

 これをしなければ、ダンジョンから魔物が溢れて、地上に出てきてしまうのだ。

 まあ、定番といえば定番だ。


 そして、最後の階層にはボス部屋があり、倒せば確定で宝箱が手に入る。

 この魔物だけは階層を移動することはない。


 ジョーさんは「まあ、ボス部屋じゃなくても稀にダンジョン内に宝箱が落ちてることはあるが、あんま期待しねえこったな!!ガッハッハ」と言っていたが、期待するなってのは無理だろう。

 宝箱ってそういうもんだよね?


 宝箱がどうやって出るのかとか、ボス部屋の魔物がどうやって復活しているのかとかはなーーーんにも分かっていない。ファンタジーだからでいいよね?別に困るわけでもないし、


 ちなみに俺たちの故郷ツチノキ村はテミアから南に位置している。


「まあ、こんなとこだな。とりあえず北はおすすめしてねえ。理由は言わんでもわかるだろうが、出てくる魔物ごとに対応を変えないといかんからな。なにが出るか分かってた方が動きやすいだろ?」


「ということは、西か、東。ゴブリンかウルフっていうことね。」


「俺はウルフがいいなー!ゴブリンきめえし」


「僕はどっちでも大丈夫だよ。カイくんは?」


「んー、俺もウルフ系かな?」


 ゴブリンにいい思い出ないし、フォルムが人間に近くてちょっとだけやりにくいしね。


「よーし、じゃあ東のダンジョンで決まりだな。それでだな、ギルドでマップ売ってるんだが買ってくれないか?」


「もちろんですよ。でも、何でそんな言いにくそうに言うんですか?」


「それがだな、マップ一つで金貨10枚かかるんだよ」


「たかっ!!!」


「何でそんなに高えんだよ?」


「昔はもっと良心的だったんだがよ、王都の研究者がステータスプレートにマップを埋め込む技術を開発してから紙のマップが廃止されてだな、ギルド本部の連中が調子に乗って10倍に値上げしやがったんだよ!」


「ステータスプレートに埋め込みを…」


 師匠に習った話では聞いたことのない話だった。


 おそらく師匠やルークが冒険者をしていた時代にはこの技術はなかったのだろう。

 ジョーさんの話では最近開発された技術っぽいし。


 それにしても金貨10枚か。

 ここ1ヶ月で貯めたパーティー資金ほとんどだな。


「自分達でマッピングしてもいいっちゃいいんだが、安全性はグンと落ちるうえに、そのマップをパーティメンバー以外に見られた時点で犯罪者にされちまう。ギルドがマップの独占権を国から買ってやがるからな。」


「何だそれずるいな!!でもよ、新しいダンジョンの時はどうすんだ?」


「その場合は、逆にギルドが冒険者からマップを買うんだ。それで、どうする?俺としては安全のためにも買って欲しいんだが。」


 なるほどそういう仕組みか。結局マップは全て冒険者ギルドのものってことだな。

 これは、買わないと面倒ごとに巻き込まれそうだな。


「東のマップ買いますよ。10枚はちょっと痛いですけどね」


「すまねえな兄ちゃん。そんじゃステータスプレート出してくれるか?」


「分かりました。けど、どうやってマップを埋め込むんですか?」


「まあ、見てろよ!俺も最初見た時は驚いたもんだ」


 ステータスプレートをジョーさんに差し出した。

 ジョーさんはステータスプレートに魔石を置く。


 が、魔石はステータスプレート上に留まることはなく沈んでいった。


「おし!これで完了だ!驚いたろ?詳しいことは聞かんでくれよ。俺もわかってねえんだ!プレート出してマップって言えばマップが見れるからよ。」


 ステータスプレートがパソコン魔石がUSB的なことか?これは

 ファンタジーって便利だな。


「はい、ありがとうございます。」


 いろいろあって既にもう疲れたが、俺たちはついにダンジョンに挑戦する。






 宝箱宝箱宝箱宝箱金貨10枚宝箱宝箱宝箱宝箱

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