第3話
浮かれすぎてみまちがえたかな?
もう一回見てみよう。
名前:カイ
攻撃力:3
防御力:2
魔力:6
素早さ:5
―スキルー
他の3人も誤差はあれど似たようなものだった。
いや、僅かな差ではあるが3人にすら劣っていた。
おかしい、おかしい、おかしいおかしい。俺はチートのはずなんだ。それなのに、なんだこれは。ステータスは軒並み普通、スキルも無いなんて。これじゃ前の世界と同じ平凡なままじゃないか。納得いかない。
いや、そうか!成長系なんだ。魔物を倒せばすぐに2倍にも3倍にもなるはずだ。今までルークが森には近づくなってうるさかったから会う機会が無かっただけなんだ。そう、魔物さえ倒せばすぐにチートが覚醒するさ。
行こう。魔物狩りだ。
「おめでとう、カイ」
「念願のステータスプレートだな」
「やったー、これで魔法使えるようになるのかな?」
「ま、まだ練習とか必要なんじゃないかな?」
「よっしゃ!強くなってやるぜ!!」
周りが騒がしい…
だけど今はそんなことはどうでもいい。
待ってろよ。驚かせてやる。チート、チートだ俺はチートなんだ。
両親やライエル達には村長の所に行くと言って森に来た。
いきなり強くなってびっくりさせてやる。魔物はどこだ?
魔物を探して森の中を歩き回る。
ガサガサ
「みつけた…」
出てきたのは角ウサギ。カイはこの魔物を知っていた。村長の家にあった本で見たことある。名前の通りウサギのフォルムにオデコから鋭利な角が出ている。
「たしか、武装した大人なら倒せるレベルだったはず」
この時カイは当然武器など持っておらず、木の棒で角ウサギと対峙していた。ロクな武器もない状態で魔物と戦って勝てるはずも無い。しかし、一種の混乱状態に陥ったカイは判断能力が鈍っていた。
「ハッ!おりゃ!くそ!なんであたんねえんだよ」
木の棒を振り回すカイ。しかし、角ウサギは思っていたより素早くカイの攻撃は当たらない。
「キュキュキュ?」
角ウサギは俺のことを格下だとでも思ったのか、可愛らしい鳴き声とは裏腹に嘲笑のような表情を浮かべる。
「くそ!くそくそくそくそくそ!!!!”ファイヤボール”」
やけくそになったカイは出るはずのない魔法を詠唱した。
当然魔法は発動するはずもなく。大きな隙を見せるだけの結果となった。
「キュキュ」
角ウサギはその隙を見逃さない。角ウサギとカイの真っ赤な目が合った。
その瞬間、角ウサギが消えた。いや、消えたようにカイには感じられた。
実際には、素早くカイの脇腹の辺りの肉を自慢の角で掠め取っていた。
「グハッ」
脇腹の辺りに痛みを感じる。触ってみると手にべっとりと血がついた。
カイはその場で倒れ込み悶えた。痛いイタイいたい。
「なんでだよ、俺はチートなんじゃないのかよ!こんな雑魚に!雑魚に!!」
角ウサギと再び目が合う。
「悪かった、謝る。謝るから助けてくれよ!な?」
「キュキューー」
必死に角ウサギに懇願する。
しかし、魔物に人間の言葉が分かるわけもなくトドメの一撃が繰り出される。
ことはなかった。
角ウサギが地面を蹴り出そうとした瞬間。倒れ込んでいるカイの後方から飛んできた火の塊によって角ウサギは絶命した。
「カイ!ひどい怪我。待っててね今治すから。”ヒール”」
この声は、アイリス?
母親の声を聞いて安心したのか、それとも痛みが限界を迎えたのかカイの意識はそこで途絶えた。
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