第1話
「大型トラックじゃねえのかよ!!!」
「カイ?なあにその”大型トラック”って?」
俺のツッコミを疑問に思ったのか、銀髪に綺麗な紫色の瞳を持った女性が訪ねてくる。
「え?ああいや、なんでもないよ母さん!それより今日のご飯も美味しいね」
「当たり前だ!カイ!アイリスの料理は世界一うまいんだ」
惚気たいだけなのか、無理やり会話に入ってきたのは赤髪に赤目の男。
「もう!カイにルークまで褒めすぎよ」
この2人は俺の両親だ。
どうやら俺は転生したっぽい。さっきのはおそらく最悪な前世の記憶。できれば思い出したくなかったけどこの場合は仕方ない。転生しても記憶なかったら意味ないしな、うん。それに全てをはっきり思い出した訳ではないらしく、名前とか歳とか正確な事は思い出そうとしてもモヤがかかったように思い出せない。
まああんな前世の事は思い出せなくていいんだけどね。
ていうか食事の途中に急に思い出すってなんだよ、普通頭を打ってとかじゃないの?
轢かれたのも小型トラックだったし…
それはそうとして、俺は今とても興奮している。ついに!ついに!!俺の時代が来たってわけだ。前世でうだつの上がらなかった男が転生。これはもうチートで異世界の勇者になるしかないってわけだ。
まず、状況を整理しよう。
俺はこの世界に生を受けて6年。このツチノキ村で母アイリスと父ルークの元に生まれた。そして、なんとこの世界、剣と魔法のファンタジーってやつです。ありがとうございます(?)
成長チートでウハウハかな?魔法チートでウキウキかな?それとも剣術チートでムキムキかな?
「カイ、鼻の下伸ばしてだらしないわよ」
よっぽどだらしない顔をしてたのか母親であるアイリスに注意された。
「それより、カイ、今日はライエル達と遊ぶ約束してたんじゃなかったのか?」
そうだった、転生したことに浮かれてて忘れてた!
俺はこの世界で6年の間に友達を作ってしまったのだ、前世ではただの1人もいなかった友達を。
「忘れてた!!ありがとう父さん」
アイリスの作ってくれたご飯を掻き込み、いつもの集合場所へと向かう。
「ご馳走様でした!いってきまーす」
「おう、気をつけるんだぞ、森のほうには近づいちゃダメだからな」
「うん分かってるよ!父さん」
「日が暮れるまでには戻って来るのよ。いってらっしゃい」
「うん!母さん、いってきます」
俺のことを心配してくれているのが分かる。父さんは、元気で豪快でそれでいて優しいところもある。それに”顔もいい”。前世で同級生にいたら、目も合わせられなかったタイプだろう。
母さんはのほほんとしているというかおっとりしている。怒ったらめちゃくちゃ怖いんだけどね。そして、”顔がいい”。美人というよりは、アイドルにいそうな可愛い系だ。こちらも、前世で同級生にいたら相手の視界に入らないようにしてこっそり見ていたいタイプだ。見てるのバレたら怖いからね…
そしてその2人から生まれた俺も”顔がいい”に決まっている。ちなみに俺は父親似なのか、赤い髪赤い目をしていた。
フフフ、イケメンでチートってもう無敵なのでは?2人には感謝しなくちゃね。
イケメンじゃなくたってさっきみたいに過保護なくらい心配してくれたり、愛されているのを感じることができる。
「よし!決めたぞ!2人には絶対親孝行する。イケメンチートで稼いで贅沢させてあげるんだ。
前世みたいにはならないように後悔しない様に生きるんだ」
「おせーぞ、カイ。」
丸太の上に座って話しかけてきた茶髪の少年はライエル。俺たちのリーダー的存在だ。戦隊モノで例えるなら圧倒的「レッド」だ。見た目だけなら俺の方がレッドなのにな。
「お、おはようカイ君」
このちょっと気の弱そうな黄色の髪をしたツンツン頭の少年はゴードン。ぽっちゃりしてて、こちらも戦隊モノで例えるなら「イエロー」だろう。
見た目通りすぎる。
「ねえねえ、今日はなにして遊ぶ?」
この、紫色の髪の毛をした彼女こそ紅一点!この子はツチノキ村のアイドルでもあるレナだ。(俺調べ)戦隊モノで例えるならもちろん「ピンク」だ。
まあ、髪の毛だけなら俺の方が紅一点だけどね!
「おはよう、みんな。それなんだけど、強くなるための修行てのはどう?俺たちの目標のためにもさ」
そう、俺たちには目標がある。冒険者になって英雄になることだ。
去年、吟遊詩人が村に来た時に聞いた英雄譚。たった1人で人々を守り、火を断ち、一刀でドラゴンの首を落とす。俺たちはそんな英雄に憧れた。
それからというもの、俺たちはこの世界の成人である15歳になったらこの村を出て冒険者になり英雄になることが目標となっていた。
「いいなそれ、珍しく冴えてんじゃん」
「僕はみんながいいならそれでいいよ」
「私もいいけど、修行ってなにするの?」
予想通りみんな肯定的だ。目標のためって言えば賛成してくれると思ったんだよな。でも、確かに修行と言っても何をすればいいのか…
まだ6歳である俺たちの体は大きくない。チートのある俺ならともかく、そんな体でできる修行といえば限られてくる。
俺たちは4人で英雄になるんだ。それだけは譲れない。前世から合わせてはじめての友達を裏切る事は絶対にできない。
筋肉はスピードが落ちるから着けすぎても良くないし、成長の妨げになるよな。
合っているのかも分からない現代知識に振り回される。
くそこんなことならもっとちゃんと勉強しとくんだった。
「うーーん、木の棒で模擬戦とか?」
「なんだよなんも考えてきてねーのかよ!ま、そんなこったろうと思ったぜ」
ライエルは丸太の上から俺を小馬鹿にする様に笑う。
「うるせーなライエル、じゃあお前なんか案あんのかよ!!」
俺は前世の記憶を得て精神年齢は推定で30歳は超えているはずなのについくせで言い返してしまう。俺とライエルの関係はこんな感じだ。でも決して仲が悪いとかではなく、気づいた時にはただただこういう関係だっただけだ。
「フフフ!もちろん。俺に任せとけよ。」
ライエルは自信満々な表情でそう言った。
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