第02話 ギャルをレベル1としたら、大企業のレベルは?
「レベル上げ......?」
ギャル、見山は頭の上にはてなマークを浮かべている。
「そう、レベル上げ」
山岡はホットティーを飲む。ここから話が長くなりそうなので、山岡は一旦落ち着くことにした。少し間が空く。見山は頭にはてなを浮かべたままだ。
「見山って、◯ラクエか◯Fって分かる?」
山岡からのいきなりの質問に、一瞬キョトンとする見山。見山は萌え袖気味の白ニットから見える手を顎に当て、考える。
そして、答えた。
「やったことない」
山岡としては、そのどちらかをやっていれば、簡単に説明ができたが、仕方無い。見山に分かりやすく伝えるためには、見山に合わせて話をする必要がある。
「そうか......それなら、最近やったゲームは?」
再び山岡が尋ねると、見山はパッと笑顔になり、答え始めた。
「最近やったゲームなら、◯ケモンかな! この前弟に借りて久々にやったけど、最近の◯ケモンってすごいよね。バトル中に進化する、ってやまさん知ってた?」
見山が楽しそうにゲームの話をしている。山岡は体育座りしてゲームをするギャルを想像しながら、答える。
「やったことあるよ。意外と最近のポ◯モンやってるんだな」
ポ◯モンの話が見山にとって分かりやすそう、ということなので、山岡はそれに例えて話を進めることにした。
「例えば見山、お前は今、ポ◯モンで言うとレベル1の状態だ」
「私、タマゴから生まれたてじゃん」
山岡がフフ、と笑う。その表現は正しい、と山岡は素直に思った。
「自分の手持ちのポ◯モンがレベル1だとしたら、どうする」
「んー。まずはその子を育てるでしょ」
当たり前、とばかりに見山が答える。続け様に山岡は質問する。
「どうやって育てる?」
「どうって......その子を戦わせるか、その子に学習装置を持たせて他の◯ケモンを倒して、経験値を稼ぐかなあ」
なかなか良い回答だなと山岡は思った。見山はちゃんとポ◯モンを一通りやっていそうだ。
「うん、その通りだ。じゃあ話を就活に戻そう。さっき就活が始まるのは3月だ、って見山は言ってたけど、具体的に何が始まるんだ?」
話がガラッと変わり、また見山がキョトンとする。ただ、見山は頭を切り替えたのか、山岡の質問に対し、即座に答えた。
「やまさん、私だってそれくらい知ってるよ。企業が、学生に対して就活の面接を始める、ってことでしょ」
胸を張る見山。金髪ボブの髪が揺れる。見山の格好は大人っぽいギャルの印象なのだが、リアクション1つ1つが若い。
「その回答だと足りないな。正しくは、経団連に所属する企業が、表立った新卒採用活動を始める、ってところかな」
見山は再びキョトンとした。
「え、どういうこと。経団連ってなに」
見山の表情が曇る。
「経団連は......国内の主要業界に属する企業が集まる集団、まぁ、サークルみたいなもんだ」
山岡は表現をかみ砕き過ぎたか、と思ったが、見山のホッとした表情を見て、それは杞憂だと分かった。
「なんだー、企業のサークルかー。何か強そうな名前だったから心配したよー」
その心配が何だったか分からないが、山岡は話を進める。
「見山が理解したなら良いけど......。話を戻すと、経団連に所属する企業が3月から新卒採用を始める、のであって、経団連に所属しない企業はいつ新卒採用をしても良いわけだ。だから、テレビ業界とかはもう採用が始まってる」
「えっ、そうなの?」
「例えば見山、お前はもうアナウンサーになれない」
「うそー、私の◯IPに出演する夢が......」
見山はZ◯P派なのか。そういう山岡はめ◯ましテレビ派だ。山岡は見山がZ◯Pに出演してるところを想像した。
「見山がアナウンサーって意外とありかもな。可愛いし」
「え?」
見山はきょとん、として山岡を見ている。見山の顔がうっすら赤くなっているが、山岡は気づいていない。
「ギャルっぽいアナウンサーってなかなかいないしな」
「そんなに私、ギャルじゃないし!」
見山は山岡に抗議するも、山岡は『いや、ギャルだろ』と内心思った。
「話を戻そう。3月から就活をする、ってことは、経団連に所属する企業に対して就活をする、ってことになる。覚えておいてくれ。」
見山は納得した顔になった。
「なるほどねー。理解しました!」
見山が敬礼ポーズをする。この新卒採用の時期は、必ず守らないといけないルールではない。あくまで、学生が混乱しないように、できれば足並み揃えて新卒採用活動をしましょう、というレベルなのだ。山岡はこれらを注意事項として、見山に伝えた。
話が一段落したところで、次からが本題になる。山岡は気合いを入れ直し、話す。
「で、見山。経団連に所属する企業って、さっきの◯ケモンに例えると何レベルくらいだと思う?」
「うーん......」
見山は悩んでいる。山岡は助け船を出した。
「イメージだけど、見山が知ってそうな大企業は大体経団連に所属してると思っても良い」
語弊はあるが、イメージの話なので、ひとまずはそういうことにしておく。
「そんな大企業たちは、◯ケモンで言えば終盤のチャンピオンロードで出てくる感覚かな。そうすると、何レベルくらいだと思う?」
「......40、50レベルかな」
見山の答えた数字は、山岡の感覚と合っていた。
「その数字で良いと思う。じゃあレベル1の見山が、3月に、レベル50の大企業に挑んだらどうなると思う」
「......一撃でやられちゃう」
見山がしょんぼりしながら答える。山岡の頭の中では、ポ◯モンの戦闘画面で、満タンだったHPゲージが一瞬でゼロになる絵が浮かんだ。
「その通り。だからレベル上げが必要ってこと」
ギャルは、なるほどなー、としょんぼりしながら納得している。この話で、これからレベルを上げる必要がある、と思ってくれることを祈る。
「じゃあ、やまさんの言う「レベル」ってどうすれば上がるの?」
見山はめげずに質問する。意外と見山の立ち直りは早い。
「それはもちろん、就職活動をすればレベルは上がっていくね。例えば、企業の新卒採用に申し込むとか、エントリーシートを書くとか、面接を受けるとか」
見山がジト目で山岡を見ている。
「でもやまさん、さっき3月からじゃないと企業の採用活動は始まらない、って言ってたよね」
「その通り。」
「それじゃあ私のレベル、3月からじゃないと上がらないじゃん!」
見山が焦り顔になる。見山の表情がコロコロ変わるのを楽しみながら、山岡は答える。
「3月よりも前にレベルを上げる最適な方法はあるよ」
「え、なになに!」
山岡はわざと溜める。見山は目を輝かせ、こちらを見ている。見山のこういう素直さは、ある意味貴重だなと山岡は思った。そして、発言した。
「レベル上げに最適なのは、――」
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見山:レベル1
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