第751話 テイマーなのかトレーナーなのか

「ひさしぶりだねぇ、ガウマン。まさかテロリストになり下がるなんて、正直驚いているよ。いくら妾腹の子でも王国貴族の誇りだけは持っていると思っていたんだけどなぁ」


「粋がるな。できそこないのヒーモ・ダーメンズ。没落して爵位を失った貴様

 に、貴族の何たるかを説く資格はない」


「あーあ。これだから血筋にコンプレックスのある奴は嫌いなんだ。爵位なんかどうだっていい。そんなものは一歩王国の外に出れば価値を失う紙切れだ。吾輩は爵位を剥奪されたが、そんなものより遥かに大切なものを手に入れた」


「負け惜しみか? 情けない」


「そう思いたければそれでもいいさ。吾輩は一年以上、冒険者として世界を飛び回った。冒険の中で得た経験や知識、出会い。どれも素晴らしい財産だよ。なにより吾輩は鉄の志を手に入れた。貴族としてのうのうと贅沢な暮らしをしていたら、決して手に入れられなかったものだろう。そう。キミのようにね」


「ほざけ。僕は父と兄の遺志を継ぎ、領地と民を守っている。好き勝手に放蕩している貴様とは訳が違う」


「ああそうかい。まぁ、どんなに偉そうに言ってもキミがテロリストであることに変わりはない。そして吾輩は世界の平和を乱すテロリストを許さない」


「気の毒だが、テロリストは貴様らの方だ。神意に背く不届き者め」


「キミは実にバカな男だ。衰退の一途を辿る王国にしがみつき、滅びゆく女神に与する。未来が見えていないのかねぇ」


「ほざけ! 僕は、僕の信念を貫くのみ! これ以上の問答は無用! リッター! 長きに渡るダーメンズとの因縁に、決着をつけるぞ!」


「御意」


 イキールとリッターが同時に剣を抜く。


「これは戦争だ。二対一が卑怯とは言うまいな」


「ああ。どうぞ。そうしてくれた方が吾輩も気が楽だ」


 ヒーモはジャケットの裾を勢いよくはためかせた。露わになった腰のベルトには、球形の魔導具が六つセットされている。


「吾輩はテイマーだ。自分で手を下すようなことはしない」


 六つの魔道具を一斉に投擲するヒーモ。それらは閃光を放ち、内部に収納されていたモンスターを放出する。


「いけっ! わがしもべたちよ!」


 出現したのは六体のモンスター――と思いきや、俺の目には六人の若いメイド達に見える。

 いや違う。あれは確か、フェイカーというモンスターだ。オス、メスに限らず、限りなく人間の女性に近い外見を持つ種族。二年前、冒険者ギルドとの戦いの時にも連れていた。

 てっきりドラゴンとかが出てくるかと思っていたので、ちょっと拍子抜け感がある。


「六対二だけど、まぁ許してくれよ。貴族様の寛大なお心でねぇ!」


 ヒーモが手を振ると、フェイカー達は一斉にイキールとリッターに飛びかかった。

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