第749話 最強の軍団
『どうしたロートス』
「いや、なんでもない」
俺は改めて四人の状態を確認する。
ムサシ。
ティエス・フェッティ。
教皇。
イキール・ガウマン。
それら四名には、女神の神性が宿っている。ここからでもわかるほど強力なやつだ。
一人一人が、魔王に匹敵する力を持っているだろう。
「ネオ・コルトの主要幹部だ。おそらく五星天とやらだろう」
『大層な名前だ。さっさと潰しちまおう』
「ああ。位置を確定する」
俺は背負った鞄から筒状の魔導具を取り出すと、その底を広場に向けた。魔道具から放たれた不可視の光が、詳細な座標をカマセイに送信する。
『確認したぜ。大魔法の発射態勢に移る』
『いつでもいけるのです』
念話灯の向こうから張り切ったサラの声が聞こえ、俺は口角を上げた。
『ロートス。そこは着弾地点から近い。退避しろ』
「問題ない。撃て」
『了解。嬢ちゃん!』
『戦略大魔法。発射するのです! さん、にー、いち……!』
サラのカウントダウンが響き、次いで高い音が鳴った。
百キロ以上離れた地点から放たれた大魔法は、音を凌駕する速度で飛翔し、ブランドンに迫ってくる。まるで太陽のような輝きを放ち、夕暮れの空を突き進む紅い閃光。
広場にいるネオ・コルトの構成員達が、一斉に空を見上げる。
直後――着弾。
講堂前の広場を中心に、紅い爆光が迸った。ドーム状に広がった衝撃波は、旧魔法学園を呑み込んで一瞬にして消滅させる。
凄まじい爆風が廃城を煽り、瓦礫を巻き上げた。俺は吹き飛ばされないように尖塔の縁を掴む。
「直撃を確認した」
かつての学び舎が消え失せた。その光景を見て、センチメンタルな気分になる。
『はっはー! どうだ。奴らを一掃したか』
「眩しくて何も見えないな」
しばらく待っていると、やがて閃光は収束した。
旧魔法学園は跡形もなく消滅したが、着弾地点には球形のバリアが張ってあり、その中の数人は健在だった。
「失敗だ。五星天は生きてる」
『まじかよ』
「女神の神性で障壁を作ったようだ。作戦通り、フェーズ2へ移行する」
『了解。なら、俺達の出番はここまでだな』
念話灯の通信が切れる。
入れ替わるようにして、別動隊から通信が入った。ルーチェからだ。
『ロートスくん。聞こえる?』
「良好だ」
『こっちはいつでも突入できるよ』
ルーチェが同行しているのは、帝国の機甲部隊だ。戦車や自走砲などを中心に編成されており、多くの歩兵が随伴している。
「ブランドンに潜んでるネオ・コルトをあぶり出して排除してくれ。だが魔法学園には近づくな。五星天がいる」
『うん、わかった。隊長、突入してください』
『突入! 作戦開始だ! 動く物はすべて敵と思え!』
帝国の機甲部隊が、ブランドンへ突入する。その様子を城の頂上から確認した俺は、また別の部隊に通信を繋いだ。
「こちらロートス。急襲部隊、応答せよ」
『こちら急襲部隊。サニー・ピース』
頼りがいのある声が、聞こえてきた。
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