第673話 任務じゃ~
二日後。
俺はジェルド族の兵士に扮し、会談の会場で警備についていた。
ソロモンの持っていたマジックアイテムを使用することで、俺はジェルドの女戦士に姿を変えている。ソロモン曰く、魔力の質や存在感までをも偽装する高度な技術を用いたマジックアイテムらしい。どうしてそんなものを一兵士が持っているのか疑問だが、現状大した問題ではないだろう。
王宮の回廊で、ふと鏡に映った自分を見る。
筋肉質でありながらしなやかなボディラインは、まさに猫科の獣を彷彿とさせる。褐色の肌と、ジェルド族特有の紫の髪。口元をマスクで隠しているせいか、大きな目が一際輝いて見える。極めつけには、スレンダーな胴体につりあわない巨大なおっぱいだ。
俺自身おっぱい星人ではあるが、まさかその俺が巨乳美少女に変身して潜入任務をすることになるとは思っても見なかった。
「このマジックアイテムは姿を偽るものだけど、使用者の本質が変わるわけじゃない。見え方が違うだけで、実際は元の姿のままよ」
というのはソロモンの言である。
たしかに姿が変わっても体の動かし方に違和感はないし、爆乳の重たさもまったく感じない。でもおっぱいを触ったらちゃんと感触も感覚もある。なんとも不思議だ。
ちなみに当のソロモンは、オルタンシアと一緒に城下のアジトで待機中である。
二人きりにするのはすこし抵抗があったが、オルタンシアがあの子は大丈夫と主張するものだから、その言葉を信じることにした。
直感ってのは大切だ。俺も直感で生きてる節があるしな。
それはともかく、俺は王宮敷地内を巡回するふりをしながら、会談の会場に向かうことにした。
そろそろ会談が始まる時間だ。各国の要人が集まってくる頃合いだろう。
と思ってたら、会場である大講堂の前に、ジェルドの女王アルドリーゼを発見した。
「うあ~ん。ねむいね~」
お付きの侍女にそんなことを言いながら、アルドリーゼは大きなあくびをしていた。
「昨夜も遅くまで色々やってたのにさ~。どうして朝なんかにしちゃったかな~」
「女王様が朝がよいと仰ったのではありませんか」
「え~? そうだっけ~? 憶えてないよ~。やっぱり朝は辛いよね~。ね~? アナちゃんもそう思うでしょ~?」
アルドリーゼは、大事そうに幼児を抱えている。ベビーモデルでもやれば一日で国家予算レベルの金が動くんじゃないかってくらい可愛らしい子ども。
他でもない。俺とオルタンシアの娘、アナベルだ。
アナベルはまだ寝ぼけ眼のようで、ぽわぽわした表情でアルドリーゼに抱っこされている。
要人の拉致とあわせて、アナベルも奪還させてもらうぜ。
もう少し待っててくれよな。我が娘よ。
俺は逸る気持ちを抑えながら、大講堂の中へと足を進めた。
「待て」
その時、しかめ面で巡回するジェルド兵に呼び止められてしまった。
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