第615話 やっと行くわ
さて、あの後みんなと相談した結果、俺達は四つのグループに分かれることになった。
一つは、亜人連邦に残り、内政を執り行い、また国防を取り仕切るグループだ。
ここはこれまで通り、サラとルーチェが担うことになった。ロロはその補佐。また、オルタンシアも引き続き残ることになった。
「オルたそがいれば、マッサ・ニャラブとのやり取りが円滑になります」
とはサラの談だ。おそらく、アナベルのことを気にしてくれているのだろう。そっちも早いとこなんとかしたいものだ。
つーかオルたそって呼んでるのかよ。
それはともかく、二つ目のグループの役割は、グランオーリスに向かい周辺国からの攻撃を防ぐことだ。
当然、戦いに秀でた者達が選ばれた。アイリスをはじめ、エルフとエカイユから選抜された数十名の戦士達だ。
アイリスの戦闘力は言うまでもない。エルフは魔法に秀でた種族であり、加えて俺の子種を受け入れることで更なるパワーアップを遂げている。エカイユは亜人の中で最も強力な種族。
「防衛に徹するなら、援軍としては申し分ありません。もともとグランオーリスには優秀な冒険者達が揃っていますから」
と、アデライト先生が言うのだからそうなのだろう。
そして、三つ目。
旧王都ブランドンに赴き、ファルトゥールの塔から俺の剣を取ってくる役割。
これはアデライト先生が引き受けてくれた。先生は王国に入れる唯一の人であるし、あの塔の場所もよく知っている。
剣を手に入れたのち、俺と合流する計画だ。
そして最後に、俺だ。
単独でヴリキャス帝国に乗り込む。
たった一人で敵地に赴くことには、多少なりとも全員が難色を示した。けれど俺は無敵だし、帝国の全戦力と戦っても余裕で勝てるくらいには強いから大丈夫だと説得したら、それ以上反対はされなかった。これも俺の人徳の為せる業か。
「それじゃあみんな、よろしく頼むぞ」
出立する俺を、みんなが送り出してくれる。
「くれぐれも、無茶はしないようにね」
ルーチェが心配そうな顔で俺の襟を整えてくれる。
「わかってる。しっかりエレノアの目を覚まさせて、連れ戻してくるさ」
「うん」
アインアッカの門前に立つ俺のもとに、ロロがフォルティスを連れてきてくれた。
「アニキ! こいつに乗っていくんだろ?」
「ああ。今回の旅は、空じゃないからな」
戦時中ということもあって、平時よりも空への警戒が強くなっている。この前みたいにアイリスに乗って移動、というわけにはいかない。陸路を行く必要がある。
「すまんなオーサ。フォルティスを返せなくて」
「いいでやんす。この子も稀代の英雄の相棒になれて嬉しそうでやんすよ」
フォルティスは肯定するように鼻嵐を鳴らす。
俺はフォルティスに飛び乗ると、サラがその鼻を街の外に向けた。
「いってらっしゃいなのです、ご主人様」
その途端、周囲に待機していた亜人達が、沸き立った。
「我らが英雄ロートス・アルバレス! 万歳!」
「ロートス様が出陣されるからには、勝利の栄光は必定である! すでに凱旋パーティの準備は整っております!」
「超絶イケメンの大人格者、ロートス様に敬礼!」
うわぁ。なにこれ。
なんか、ついこの間まで『無職』やらなんやらとバカにされていたものだけど、いつの間にか凄まじく英雄視されているな。ほんと、人生ってのは妙なもんだな。
「行くぞフォルティス!」
立派な黒い馬が嘶く。
そして俺は大歓声の中、愛する仲間達に見送られ、新たな戦いの旅に出た。
待ってろよ。エレノア。
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