第433話 ここからは止まらぬ

 学園についた。

 大きな正門には見覚えがある。

 魔法で作られた施設だからか、ブランドンにあったものと瓜二つだ。


「懐かしいな」


 俺は敷地内に入っていく。

 先生はどこにいるんだろうか。

 この時間だと、授業中かな。

 そんなことを考えながら歩いていると。


「な、なんだぁっ! うわあぁっ!」


 遠くからすごい悲鳴が聞こえてきた。


「助けてくれぇ!」


「なによあれ! 食べられてるっ!」


 男女入り混じった叫び声と、凄まじい轟音が連続して響いていた。

 これは、只事じゃないぞ。


 俺はすぐさま駆け出し、騒ぎの場所へと向かう。

 そこは講堂前の広場だった。つくづく、ここは騒動の中心になりがちだな。


「こいつ! 強い! 強すぎる!」


「誰か先生を呼んで! スペリオルクラスの人でもいい!」


「うわぁ! また一人やられたぞ! もうだめだぁ……!」


 広場では、巨大な四つ足のモンスターが暴れていた。凄まじい力と速度で、対処する生徒達を踏みつぶし、突き飛ばし、食い千切っている。


「あれは、なんだ?」


 トリケラトプスにも似たモンスターの全身は、ドス黒いオーラで包まれていた。見るからに禍々しい。


「魔力なのか」


 あの黒い魔力が、モンスターの戦闘力を激増させているんだ。


「みなさん! 下がってください!」


 凛々しい声が響く。

 直後、背後から俺の傍を、緑のきらめきが駆け抜けていく。

 この声は、間違いない。


「アデライト先生だ! アデライト先生が来てくれたぞッ!」


 生徒の誰かが叫ぶ。

 長い金髪をなびかせ、緑のローブをはためかせ、先生は大地に沿って滑空するようにモンスターへと肉薄する。


「ムーンライト――」


 握った杖の先に、青白い光が生まれる。


「――シャープナー!」


 人一人分ほどもある三日月形の刃。くるくると回転しながら上空へ飛んだそれは、モンスターの真上で軌道を変え、急降下する。

 直撃。

 ムーンライト・シャープナーは大地に突き立ち、モンスターの胴体は真っ二つに切断された。


「やった! アデライト先生が倒したぞ!」


「すごい……! 流石はアデライト先生だ!」


 生徒達ががやがやしているが、当のアデライト先生は、モンスターに向いて構えたままだ。


「油断してはいけません! 離れなさい!」


 胴体を切断されたモンスターは、まだ死んでいない。黒々としたオーラが蠢き、その傷口を塗りつぶしていく。


「そんな……再生しているの……?」


 モンスターが動き出す。まんまるの目が先生を捉えた。

 こうしちゃいられねぇ。あいつはなんかヤバイ。

 俺は大地を蹴りつけ、高く跳躍する。


「くらえッ!」


 今まさに発進しようとしたモンスターの額に、渾身の飛び蹴りをお見舞いする。闘技場でアイリスが放ったやつを、見よう見まねでやってみたのだ。

 手応えアリ。モンスターの頭部は無残にも弾け飛んた。

 やったぜ。

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