第233話 これは二度目の再会
「生きてたのね!」
何を言われるかと思えば、エレノアはまっすぐに俺の胸に飛び込んできた。
え。これは想定外の事態だ。
「おいエレノア。ちょっと、どうしたんだよ」
「どうしたもこうしたもないわよ! アインアッカ村が亜人に占領されて、あなたも殺されたんじゃないかって……でも、見つからないし。とっても心配したのよ」
涙ぐんだ瞳で見つめられ、俺は束の間の戸惑いを覚えた。
そうだった。エノレアの中では、俺はアインアッカ村にいることになってるんだっけか。エルフの森で再会した後、村に戻ったと思っていたのだろう。
それで、亜人連合がアインアッカ村を占領した報せを聞いた。俺のことを心配するのも仕方ないと言える。
「そうか。おじさんとおばさんは? それに、俺の両親を見たか?」
エレノアはふるふると首を横に振った。
「いいえ。うちの親も、ロートスのご両親も見つからなかったわ」
「そうか……」
ほかの村人がどうなったかは分からない。あの村はヘッケラー機関の隠れ蓑だから、亜人連合に手を貸している可能性だって十分にある。なんせ神父が加担していたんだからな。村ごと王国に反旗を翻してもおかしくはない。
「でも、あなたが無事でよかった」
俺をぎゅっと抱きしめ、胸に顔をうずめてくるエレノア。
心配をかけたようだ。悪いことをした。後ろめたいのは否めない。
「感動の再会ってやつだな。めでてぇこった」
エレノアの後ろで、マホさんが口を開く。
「それはいいんだけどよ。その女がお前さんと一緒にいるってのは、一体どういう事の運びだ?」
その視線は、俺の隣に向けられている。
「え?」
エレノアはマホさんの指摘を受け、彼女の視線を追った。
「アイリス?」
「ごきげんよう」
慇懃に一礼したアイリスは、二人から胡乱な目を向けられる。
俺から体を離し、咳ばらいをするエレノア。
「どうしてここに? あなたも学徒兵として派遣されたの?」
「いいえ。そうではありませんわ」
「だったらどうして?」
アイリスは俺にアイコンタクトを送ってくる。なんと言うべきか、と指示を仰いでいるようだ。
事ここに至っては、もはや隠す意味もないだろう。
全てを打ち明けよう。
しかし。
「おい! こんな場所で話し込むなよ。邪魔でかなわんぞ」
衛兵に怒られてしまう。
たしかに門の前でするような話じゃなかったな。でも突発的な再会だし仕方ないだろ。
「実はわたくし達は、この総督府に用があってきたのですわ。けれど、この方に門前払いをされていまして」
衛兵の横やりをうまく利用して、アイリスがそんなことを言い出した。
「そうなの? ロートス」
「まぁ……そうだな。アイリスの言う通りだ」
途端。エレノアの表情が凛々しくなり、強面の衛兵をきつく見上げた。
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