第222話 ガンガンいこうぜ
「作戦はどうするの?」
「作戦か」
エレノアが神妙な面持ちで尋ねると、イキールは考えるような素振りを見せる。
「簡単だ。突っ込んで斬り伏せる。それしかない」
「なにそれ。作戦でもなんでもないじゃない」
「はは。いいじゃねぇか分かりやすくてよ。アタシはそういうの大好きだぜ」
「坊ちゃま……」
各々がそれぞれの反応を見せている。
いやぁ、そんないい加減でいいのかよ。戦争って命を賭けるもんじゃないのか。
作戦はもっとちゃんと考えなきゃダメだろ。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する、とかな。
その時、亜人軍の方から笛の音が聞こえてきた。
これは多分、攻撃の合図に違いない。
「撃ってきたぞ!」
思った通りだ。
亜人軍の最前列に並ぶ弓兵が、ロングボウによる攻撃を開始していた。矢が光っているところを見るに、ただの弓矢じゃないな。おそらく、マジックアイテムの一種だろう。油断はできない。というかしてほしくない。
「行くぞリッター! 亜人どもを蹴散らすぞ!」
「はっ!」
イキールとリッターの全身が仄かに輝き、大地を蹴って急加速。二人して敵陣に突撃した。
「マホさん!」
「ああ! アタシらも暴れるか!」
エレノアは乙女の極光を纏い、イキールの後を追い、亜人の軍へ一直線に猛進。
マホさんはというと、その場でグレートメイスを地に叩きつけていた。すると、巨大なメイスが脆くも砕け散る。
え?
いや、よく見れば違う。いくつかの部品に分かれただけだ。それらは形を変え、マホさんの胴体、四肢、頭部を覆っていく。
まるで合体ロボットみたいに。
数秒後、マホさんは金属のごつい全身鎧に包まれていた。メイド服と鎧の組み合わせが、やけにマッチしている。
は? めっちゃかっこいい。男心をくすぐるカラクリである。琴線に触れるってやつだ。
マホさんは鎧の継ぎ目から青白い光を閃かせながら、亜人の軍へと突っ込んだ。
「まじか……」
全員突っ込むのかよ。
いくら作戦がないといっても、なんかあるだろ。せめて前衛と後衛で役割を分担するとかさ。
いや、呆れている場合ではない。
たとえ俺にできることがなくても、居ても立ってもいられないんだ。
とにかく何を行動を起こさなければ。俺の医療魔法とかなら、多少の役に立てるはずだ。あとは、肉壁にもなれるはずだしな。
俺は草むらから出ると、意を決して走り出す。
今まで俺が培った全てを総動員させて、エレノアを守るんだ。それしかない。
そして俺は、亜人軍へと突っ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます