第207話 鶏が先か、卵が先か
「なんとなく理解できた。つまり、スキルがあったからスキル至上主義になったんじゃなくて、スキル至上主義を作るためにスキルが生まれたんだな」
「そういうことです」
マクマホンが首肯する。
「けどよ。ヘッケラー機関は何のためにそんなことをした?」
「ロートスくんは、機関の総帥が誰だか知ってる?」
ルーチェの問いに、俺は頷いて見せる。
「マシなんとか五世だっけか。神を超越するとかなんとか言ってたな」
よく考えなくても中二病全開の発言だよな。恥ずかしいやつだ。
「なんでも知ってるんだね。ロートスくんって」
そこで驚かれるとは思わなかったな。
「成り行き的に知っただけだ」
「ううん。ヘッケラー機関の事や、この世界の真実について、知ってる人はほんの一握りしかいないんだよ? それだって、私みたいに特別な生まれだったり、政治的に力を持っている人だったり。ただの学生がそこまで知っているなんて普通じゃありえないの」
普通じゃありえない、か。
俺の運命はヘッケラー機関が弄っているらしいから、普通じゃないと言われてもそりゃそうだとしかならないな。そもそも生まれからして機関が関わっているんだし。
俺がただの学生っていうのも疑惑の判定だろう。転生者だしな。
「やっぱり、私の選択は間違ってなかったんだ」
ルーチェは独り言のようにつぶやくが、それには言及しないことにした。
それよりもだ。
「帝国は、スキル至上主義をなくすために、亜人同盟なんかを作ったのか」
俺に睨まれたマクマホンは、困ったような顔をして手を挙げた。
「とんでもありません。私どもはただ、虐げられている亜人達に救いの手を差し伸べただけです。共に王国を打倒し、あなた方が安心して帰ることのできる家を作りましょうと」
なんだそれは。結局けしかけてんじゃねぇか。
「サラはどうなんだ。あいつは俺の従者なんだがよ」
「それについては……」
マクマホンは咳払いをする。
さて、何を言うつもりだ。
「申し訳ありません。わたしの力では、暴走した亜人達を止めることはできなかったのです。一部の過激な亜人達は、マルデヒット族のドルイドであるサラ嬢を盟主にすると頑なでした」
帝国の仕業じゃないってことか? ホントかよ。
「ですが勘違いなさらぬよう。サラ嬢は、多くの亜人達に懇願され、ご自身の意思で亜人同盟の盟主になられたのです」
「なんだと?」
サラがそんなことやるはずがねぇ。
「どうせ無理矢理やらせたんだろうが。ふざけたこと言ってるとタダじゃおかねぇぞ」
俺はマクマホンに詰め寄り、胸倉をつかみ上げる。
だが、マクマホンに動じたようすはない。
「ロートスくん。待って」
「ルーチェ」
「その人の言ってることは本当だよ。嘘じゃない」
「なに?」
「サラちゃんは自分から望んで盟主になったの」
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