第170話 フォールガイズ
「アカネ……!」
いくらなんでも早すぎる。
「どうやってここまで……?」
「ジャンプして来たんじゃ」
「こんな空の上まで?」
「造作もない」
たった数秒で? 脚力どうなってんだ。しかも、ヘッケラー機関の場所、知ってたのかよ。
着物っぽい衣装をなびかせて部屋に入ってきたアカネは、機械仕掛けの神と対峙する。
「久しいのう。ピストーレんちの坊や」
(……ばばぁ。何をしに来た)
「言うに及ばずじゃ」
どうやらアカネには声が聞こえているようだ。
知り合いのようだが、ダーメンズ家とつながりでもあるのか?
「ほれロートス。いつまで寝そべっておる。はよう立ち上がらんか」
「あ、ああ」
「一人か?」
「仲間はさっき逃がしたけど」
「それが正解じゃな。こやつには、まともなやり方では通じんぞ」
アカネなら勝てるのだろうか。
そういえば、アカネは捨てられた神殿で神を自称する石像をコテンパンにしてたな。この歯車野郎も神を騙っているに違いない。なら、倒せるんじゃないか。
「しかし……滑稽な姿になったもんじゃのう。人間だった時のほうがまだ男前じゃったぞ」
(だまれ。この僕は神を超越したんだ。人の身なんか必要ない)
「神を超えるか……バカげた話じゃ。運命を弄んだくらいで調子に乗るとはの」
(もういい。死ね)
無数のレーザーがアカネに向けて放たれる。
その全てを両手で払いのけたアカネは、つまらなさそうに鼻を鳴らした。
「しょっぱい光線じゃ。魔法の研鑽を怠っておったか」
(相変わらずのふざけた強さだ)
「人間であることを捨てたおぬしなど、わらわの敵ではないわ」
(それはお互い様だよ。ばばぁ)
アカネが俺の手を握る。
「そろそろお暇するかの。こんなところにおっては、いらぬ思い出まで蘇ってきそうじゃ」
(逃げる気かい?)
「小便臭い坊やの相手なぞまっぴらごめんなのじゃ~」
直後、俺の三半規管がびっくりした。
アカネに引っ張られて空に飛び出したことに気付くのに、数秒もかかってしまった。
「うわ! 飛んでる!」
「落ちてるだけじゃ」
「だめじゃねぇか!」
コッホ城塞が上へ上へと流れていく。実際は俺が落ちてるんだが。
重力に引かれてどんどん加速する俺の体に、アカネの豊満な極上おっぱいが押し付けられる。
「安心せい。うまく着地してやるわ」
「ぜったいだぞ!」
落下の恐怖というのは本能的なものだろう。超怖い。
転生前にいった廃病院をモチーフにしたお化け屋敷より怖い。怖さの種類が違うさ。絶叫マシーンで例えた方がよかった。
しばらくして、俺はアカネに抱きしめられたままヘッケラー河に着水。
たぶん、物凄い水飛沫が舞っているだろう。
深い河に潜り込んだ俺は、その衝撃で気絶するしかなかった。
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