第141話 ここまでずっと全裸
「強力な助っ人が来てくれたでやんすね!」
「どこの誰ナリか? あいつは」
オーサと副長もアイリスの増援に喜びと驚きを抱いているようだ。
エルフはまだ十人以上が前線に残っている。
ヘッケラー機関は数人にまで減っていた。
「我々がこんな小娘どもに敗れるのか……?」
「隊長! ここは一度撤退するしか……」
「ええい黙れ! 機関の名を出した以上は退けないんだよ!」
難儀なものだな。名乗らなかったらよかったのに。
エレノアとアイリスが並び立ち、男達をじわじわと追い詰めていく。
「次にやられたいのは誰? 死にたい人から前に出てくるといいわ」
エレノアが眉を吊り上げて強い口調で言った。両手に真っ赤な炎をチラつかせ、いつでもフレイムボルトを撃てるようにしている。
「くっ……調子に乗りやがって!」
男は口惜しそうに歯を食いしばる。
「こうなったら、あれを使うしかないようだな!」
あれ? なんだ、何か奥の手があるっていうのか。
男が何かを取り出そうと、ローブの中に手を入れた瞬間。
「ぐあっ!」
目にも留まらぬ速さで距離を詰めたアイリスが、男の首を掴んで持ち上げていた。
「妙なことはなさいませんよう。ご立派な首がちょんと飛んでしまいますわ?」
貴婦人の笑みを浮かべながら片手で屈強な男を持ち上げるアイリスには、驚きを通り越して呆れるしかない。強すぎる。
男は苦しそうに呻き声をあげている。このままじゃ窒息死するだろう。
「た、隊長……」
「そんな……」
刺客たちは戦意を喪失していた。
無理もない。
「待つでやんす!」
そこにオーサの声が響いた。
「まだ殺さないでほしいでやんす。その人間からは情報を抜き取るでやんすよ。何故あっしらの里を襲ったか、聞き出さないといけないでやんす」
「あら。かしこまりましたわ」
次の瞬間、アイリスは男を大地に叩きつけた。すごい音が森に響く。
死んでないよな?
「峰うちですわ」
違うだろ。
「う、うわぁあぁぁぁあぁ!」
「化け物だぁあぁぁ!」
「にげろぉぉおおぉ!」
残された刺客達が逃げていく。
「逃がすなナリ! 捕らえろナリ!」
副長が鋭い指示を飛ばすと、エルフ達が一斉に動き出す。
まもなくヘッケラー機関の男達は一人残らずエルフに捕縛されてしまった。
勝負アリだ。戦意を失った兵ほど脆いものはないな。まったく情けない連中だ。
「なんとかなったでやんすね……」
オーサが長い溜息を吐く。
「まさかここまで苦戦するとは思っていなかったナリね。負傷者も多くなってしまったナリ。まぁ、あれだけの戦いで死人が出なかったのは不幸中の幸いナリね」
そうなのだ。実はエルフ側には死人が出ていない。重症者はいるが、命に別状はない程度だ。
「ロートスのおかげでやんす。率先して治癒魔法をかけて回ってくれたでやんすよ。治癒魔法に関しては、あっしらより優秀かもしれないでやんす」
まあ、それくらいしかできることがなかったからな。
とはいえエルフに褒められてしまうとは。鼻が高いぜ。
「ひとまず村に戻るナリ。いろいろと話さなければならないこともあるだろうナリ」
「そうでやんすね」
俺とエレノアとアイリスを順にみて、オーサと副長は頷く。
「族長の家に集まるナリよ」
「りょーかいでやんす」
とりあえずは、なんとかなったようだった。
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