第125話 馬車旅とか初めてだ

 集合場所は、王都の外門だ。


 俺とアイリスが到着した時、すでに他のメンバーは勢揃いしていた。

 みんな早いな。まだ集合時間には余裕があるはずだが。


「おお。来たか、婿殿」


 俺を見て第一声をあげたのはフィードリットであった。


「わりぃ、待たせちまったか?」


「いいえ。みんなちょうど今来たところです」


 アデライト先生が笑顔で答えてくれる。


「ロートス、おはようっす!」


「おう。おはようウィッキー」


 ウィッキーはさりげなく俺の隣を陣取る。なんか、この三週間、ずっと距離感が近い気がする。まぁ、美少女と親しくなるのはいいことだ。美少女と親しくなりたくない男など、古今東西いるわけがない。


 セレンはというと、無表情のまま目をこすっている。眠いのだろうか。


「徹夜」


 そんなことをぽつりと呟くセレン。


「まじか。大丈夫なのか?」


「へいき」


 気持ちはわからんでもない。


 俺も転生前、遠足の前日は楽しみで眠れなかった思い出がある。

 この場合はちょっと違うか。


「これで全員揃ったか。みな、忘れ物はないな?」


 フィードリットは大きめのバックパックを背負いなおしつつ、腰の剣の位置をなおす。


 事前の準備は完璧だ。ほとんどルーチェにやってもらった。

 どうせ自分でやったら漏れが出るんだ。それなら最初から信用できる誰かにやってもらった方がいい。彼女はメイド長なんだから、そういうのも仕事のうちなのだ。


「よし、ならば。出発だ」


 ついにこの時が来た。


 俺は腹をくくる。

 命がけの旅が始まろうとしているのだ。


 俺達は、外門を出たところに停めてあった大型の馬車に乗り込み、エルフの森へと出発した。


 御者はアデライト先生とウィッキーが担当してくれた。

 残りの四人は、車内の座席に腰を下ろす。


 俺はしばらく、口を開くことなく窓の外を眺めていた。


「どうした、婿殿。緊張しているのか?」


 沈黙を破ったのはフィードリットだ。


 対面に座る彼女はにやりとした表情をこちらに向けてくるが、俺は彼女の非常に短いスカートの奥が気になって仕方なかった。今にも下着が見えそうじゃないか。というか、履いているのか?


「緊張していないといえば嘘になるなぁ。けど、どっか楽しみでもあるよ」


「うむ」


 満足そうにうなずくフィードリット。


「それでいい。冒険とは楽しむものだ。出会いも危険も喜びも、すべて彩りあるものだ。それがわかっているようでなにより。さすがは婿殿といったところか」


「……あのさ、その婿殿っていうの。一体なんなんだ?」


 どうして俺が婿殿と呼ばれなければならないのか。


「ん? お前はアディの婚約者だろう? ならばワタシが婿殿と呼んでなんら問題はあるまい」


「婚約者ぁ?」


 ちょっと待てちょっと待て。どこ情報よそれ。それってどこ情報よ。

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