第117話 エレノアは超有名人
次の日から俺とセレンは、放課後に魔法の自主訓練を始めた。
授業で習ったことを復習するのもそうだが、もちろんそれだけじゃない。さらに高度な魔法を使えるよう、座学にも実技にも力を注いだ。
ある日、図書館で魔導書とにらめっこをしていると、セレンの淡々とした声が耳朶を打った。
「思いついた」
やはり平坦な声だが、なんとなく弾んでいるようにも聞こえる。
「なにを思いついたんだ?」
「ハナクイ竜に遭った時、一緒に戦った子」
「エレノア?」
「そう」
あいつはイキールと口論したりアイリスと決闘したりで学園の有名人だからな、セレンも顔と名前は把握している。
「あの子に教えてもらうのがいい」
「え」
「同じ学年で彼女ほどの魔法の使い手はいない」
それは否定しないが。
俺は返答に困る。
「……それなら、普通に先生に教えてもらった方がいいんじゃないか?」
「アデライト先生は調査で忙しいはず」
「いや、他の先生もいるだろ」
「それはいや」
なんでだよ。
アデライト先生へのこだわりがすごいな。ハーフエルフだということで嫌ったりしていないのはいいことだ。
俺は頭を抱える。
今更エレノアと顔を合わせるのは非常に気まずい。だからといってセレン一人で行って来いというのも不自然だし。
いや待て、いるじゃないか。他に適任が。
「心当たりがある。アデライト先生の後輩で、魔法合戦で互角に渡り合う魔法使いを知ってるんだ」
セレンが首を傾げる。
「一度会ってみるのはどうだ? たぶんエレノアよりすごい奴だぞ」
「あなたがそこまで言うなら」
「決まりだな」
あとでウィッキーのところに行ってみよう。あいつなら喜んで協力してくれるだろう。エリクサーを手に入れるのは、あいつの為でもあるんだから。
「ところで」
セレンが続ける。
「あなたはあのエレノアっていう子と、知り合い?」
「ん。まぁ知り合いって言うか、同郷っていうか」
なんと説明したもんかな。幼馴染っていうと紹介しろって話になるかもしれないし、適当にお茶を濁しておくのがベストか。
「同じアインアッカ村ってところから来たんだよ。『無職』の俺と『大魔導士』のあいつじゃ、接点なんてないも同然だけどな」
「……そう」
セレンはなんとも思っていないような感じだ。
すこし間があったのは意味があるのだろうか。
「とにかく、区切りの良いところで終わろう。教えてくれる奴のところに案内する」
「わかった」
そうして俺達は、再び本の虫になったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます