第41話 お前も家族だ
「君は……?」
思わず尋ねてしまう。
正直、この少女がスライムであることは予想していたが、あまりの衝撃に心が受け入れてくれなかった。
「わたくしはわたくしです。マスターの忠実なるしもべ」
白い肌はどう見てもスライムじゃない。人間、いや女神にも見紛う。
空色の髪は滑らかで、もとが液体だったなんて信じられないくらいだ。
「スライム……なんだろ?」
「はい」
「どうしてそんな姿に」
スライムは不定形だから、どんな形にでもなれるだろう。けど、これはまるで変身だ。
普通じゃないことは何の知識もない俺にもわかる。
「さきほどマスターがお話しされていた女性から、スキルを拝借いたしました」
少女はいたずらっぽい笑いを漏らす。
俺は柔らかく大きなおっぱいを目の前にして、下半身は熱く、しかし頭は冷静に回転させる。
「アデライト先生のことか? あの人がスキルを?」
「ええ。あの方は自身の肉体を変化させるスキルをお持ちでした。マスターのおかげで『ノーハングリー』は不要になりましたから、少しでもマスターに喜んでもらえるように人の姿を取ってみたのです」
「そりゃあ……」
グッジョブとしか言いようがない。
「捨てられたくありませんでしたから」
少し不安そうに彼女は呟く。
空色の瞳にじっと見つめられ、俺の心臓は割鐘のように鳴り響いていた。
大体、十五、六歳くらいだろうか。人の姿になったスライムの肉体年齢はそれくらいに見えた。
今の俺からすれば、すこしだけお姉さんだ。
「捨てねぇよ」
俺は彼女を抱きしめ返す。
その肌触りは、やはりスライムではなく、きめ細やかな人間の肌のそれだった。
「お前は俺の、二人目の従者だ」
「マスター」
俺達は強く抱きしめ合う。
スライムから美少女になった途端この対応では、現金な男だと思われるかもしれない。
けど、本質は見た目じゃないんだ。
こうやって心から俺を心配し、慰めてくれる。その為に姿まで変えてくれた。その真心に感動したのだ。
「マスター。わたくしを、サラちゃんと同じようにマスターの家族にしてください」
「家族だって?」
それに、俺とサラが家族? 主従ではあるが、別に結婚したわけもないのに。
スライムは微笑んで、その白い指で俺の頬を撫でる。
「家族のあり方は千差万別です。時代や場所によって変わりもします。けれどただ一つ、家族を家族たらしめる不変の力があるのです」
「それって?」
「愛です」
俺の耳元でそっと囁くスライム。
「その想いに支えられて、人は強くも優しくもなれるんです」
確かに、彼女の言うことは正しいかもしれない。
俺はサラを、女性としてはかどうかはわからないが愛している。サラも同じだろう。そして今俺がスライムから向けられている感情も、もしかしたらある意味で愛なのかもしれない。
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