第21話 スライムってやばいんだ

 俺はサラを連れてメダルの場所まで駆け込んだ。

 辿り着いたのは広場だ。鬱蒼とした森の中、そこだけ不自然に切り開かれている。


 まず目に入ったのは、信じられないくらい大きな半透明のモンスター。


「これがスライムかよ……?」


 俺は乾いた笑いを漏らしながらそれを見上げる。

 転生前によくお世話になっていたコンビニエンスストアくらいのでかさだ。イメージしていたバレーボールくらいのもんじゃない。


「デカすぎるぜこれは」


 思わず呟いてしまう。そりゃそうだろ。


「ご主人様見てください。イキールです」


 サラに言われて視線を動かすと、戦闘不能になった騎士を守るようにイキールが剣を構えていた。奴の体は黄金の光に包まれていて、スキル『剣聖降ろし』を発動していることが窺える。


「くそっ! なんなのだこのスライムは! まるで攻撃が通じない!」


 ご丁寧に状況を説明してくれたな。たしかにあれじゃ、物理攻撃は通らなそうだ。


「どうします?」


「決まってる。メダルを取りに行くんだ」


「助けないのですか?」


「バカ。そんなことしたら目立つだろ。あいつと共闘するだけでも話題になりそうだってのに」


 とにかく目立つ行動はなしだ。


「行くぞ。走れ!」


「はいっ」


 俺とサラはさっさと巨大スライムの後ろに回り込む。

 広場の中央には台座があり、そこに何枚ものメダルが置かれていた。


「これだな」


 メダルを回収し、そそくさと広場を離れる。

 イキールはスライムと戦っているが、動けなくなった騎士を守るため徐々に追い詰められていく。


 ありがとうイキール。お前の尊い犠牲は忘れないよ。


 広場から少し離れたところで、俺とサラは立ち止まった。


「さて、無事回収できたが……このまま戻るわけにはいかないな」


「え、どうしてです?」


「考えてもみろ。こんなに早く試験をクリアしちまったら、スペリオルクラスに入れられかねないだろ。俺はベースクラスあたりを狙いたいからな。明日の早朝くらいに戻るつもりだ」


「なにがなんでも目立ちたくないんですね……」


「当たり前じゃ」


 走ったせいで乱れた息を整えて、俺は来た道を戻りだす。


 しかし。


「ご主人様、待ってください。誰か来ます」


 サラが俺の手を掴んだ。


「この声は、さっきイキールと言い合いをした女の人ですね」


「エレノアか?」


 なんでわざわざここを選んだんだあいつは。あんな化け物みたいなスライムがいるんだぞ。


「隠れるぞ。こっちだ」


 俺はサラを引っ張って、近くの茂みに倒れこんだ。

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