第11話 サラ、大変身
翌日。
俺はサラの服を買うためにリッバンループの街に繰り出していた。
とあるブティックで新品のローブを試着したサラは、その赤色の目を輝かせていた。
「こんないいもの、初めて着ました。生地がなめらかで、軽くて丈夫。ほんとに買っていただけるんですか?」
「もちろんだ。従者として相応しい服装をしてもらわないと、俺も困るしな」
「あ、ありがとうございますっ!」
サラが来ているのは、黒を基調としたフード付きのローブ。奴隷契約の首輪を隠すために真紅のストールを首に巻いている。その下にはフリルをあしらった上品なブラウスと、紺色のプリーツスカートだ。オーバーニーソックスとブーツを組み合わせて、旅にも対応できるように考えた。見た目はもちろんのこと、実用性も大事なのだ。
「お連れ様、よくお似合いですね。とても素敵ですよ」
「ああ、そいつはどうも」
若い女性店員がそんなことを言ってくるが、当たり前だ。俺が選んだんだからな。
ちなみにサラのぼさぼさの髪はすでに床屋で整えている。首輪さえ隠せば、どこからどう見ても奴隷には見えないはずだ。
いや、我ながら完璧すぎるね。どこに出しても恥ずかしくない美少女になったわ。
「お会計、十万エーンです」
「高っ! そんなにするのかよ!」
「高級品ですから」
「だからってなー」
言いつつ、俺は躊躇いなく払う。
「あの、ご主人様。ボクなんかのためにそんな大金を使うなんて」
サラが申し訳なさそうに見上げてくるが、知ったことか。
「うるせぇ。お前にはそれがお似合いだ」
十万エーンを支払い、店を出る。
試着したそのままの姿で外に出たサラは、早々に深く頭を下げた。
「あのっ。ほんとに嬉しいです! ここまでしていただけるなんて、思ってもみませんでした!」
「そうだろうな。俺もそう思う」
この世界の奴隷の扱いを見ていると、俺のやっていることは明らかに奇行だろう。でもいいのだ。サラはかわいいから甘やかしたいし、そもそも奴隷の扱い方なんてわからねぇ。普通の女の子として接したらいいじゃないか、という軽い気持ちしかない。
「まぁ、恩を感じてるならこれから返してくれ。俺が極力目立たないように、学園でも働いてもらうからな」
「はいっ! 喜んで!」
サラは両の拳を握り締め、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら答えた。その表情は心から喜んでいるようで、とても眩しい笑顔だった。
あれだ。
昨日の今日でここまで明るい表情ができるようになったんなら、俺としても満足だ。計四十万エーンも奮発した甲斐があったってもんよ。
俺、イケメンすぎる。
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