プロローグ① 日常

ネコloveです。

プロローグでは、日常、転移etc.なので長くなりますがお付き合いください


♢♢♢


俺は黒星冷夜くろほしれいや


なんとも厨二チックな名前だが、両親が冬の夜に出会ったため、冷たい夜で、冷夜らしい。


俺は記念品かなにかかよ!


そして、実にロマンチックな出逢い方に負けず、夫婦仲は、良好なんてもんじゃなくて、いつまでも惚けている。


親の惚気話を聴かされるってどんな気持ちかわかるか? 


両親ももう三十七なのに、俺に新しく弟ができるかもしれない。


あっそうそう。そんな両親に子供が俺しかいない訳もなく、高校三年生の姉と中学二年生の妹がいる。


妹は今、絶賛思春期で、昔のように甘えてくる事はない。


そんな時むさ苦しい声音が耳に届いた。


「たのむっ。今日の放課後来てくれよ! 冷夜がいないと合コンできないんだよぉ。女子が来ないんだぞ⁉︎」


そう言って困り顔で俺にねだってくるのは、田中拓馬たなかたくま


自分で自覚したのは中学校の頃だったが、俺は割とイケメンな部類に入るらしい。


割とね。そう。割と。


きっと両親の顔が整っているから受け継いだんだろう。


というか、自分で言う物ではないが、俺が行くってことで来る女子が拓馬に靡くわけなくないか?


「はぁ。拓馬。何回目だよ。まぁいいぞ。今日は暇だしな」


俺が拓馬について行くことを告げた瞬間、様々な女子グループがザワザワと沸く。


「ありがとぉ! ありがとぉ! 本当にありがとぉ!」


「ま、一応友達だしなっ」


俺がそういうと目元を潤わせ……ることはなく興奮してみんなに告げた。


「冷夜も来るカラオケに行く人! 女子大歓迎!」


「うちのグループ行くわ」


「ヨッシャーーーー!! 冷夜ありがとぉぉぉ!」


あれれ? 俺って利用されてる?


「私のグループも!」


……。


♢♢♢


「黒星さん。ここの問題が分からないので教えてほしいのですが……」


俺の学年の高嶺の花、東雲さんがいつもどおり俺に分からない問題を聴きに来た。


「えーっと。ここはーーーーーー」


本当にあの東雲さんがこの問題も分からないのだろうか。


「あ、ありがとう! 黒星くん!」


問題を教え終わると彼女は顔を真っ赤に染め、そう言って去っていった。


彼女が席についたところで拓馬が話しかけた。


「ねぇ東雲さん。今から皆んなでカラオケ行かない?」


「ごめんなさい。私、今日は用事があるの」


やっぱりな。

あの東雲さんがカラオケなんて行かなそうだもんな。


「因みに、冷夜も来るぞ?」


そう拓馬がいうと、東雲さんは周りをチラチラと確認し、こう言った。


「黒星くんが行くなら私もいきます」


えっ?


俺が行くから来るの?


あぁ、そう言うことか。


本当は行きたかったけど話せる人が居なかったから……みたいな感じか。


「もう俺には冷夜への好意がバレていいって思ったの? えっ。なんか告白みたいな感じじゃない⁉︎」


「べ、別に好きなわけじゃないからっ!」


なんて言ってたのかは急に声が小さくなって聞こえなかった。


だが東雲さんが顔を赤くして怒っていることから、拓馬がまた変なことを言ったんだろう。


♢♢♢


「いやぁ、冷夜もあながち楽しみだろ?」


あの後は特になんにもなく、カラオケのお店に向かっている。


「俺歌あんまり歌えないからなぁ……」


「あっ! 黒星くん!」


声のした方を見ると髪を後ろに一つで集めた俗に言うポニーテールの東雲さんが居た。


一度家に帰ったらしく、来ている私服はとても可愛らしい。


なんだかんだ話していたらカラオケボックスに着いた。


俺の隣の席の取り合いが勃発したが、主催者権限と、高嶺の花というクラスカースト上位の権限の前に、左には拓馬、右には東雲さんが座っている。


みんな歌がうまいな……。


有名なJ-POPなどを歌ってくれるので聴いてて楽しい。


「次、黒星くんだよー」


茶髪のショートボブな女の子手嶋灯里てしまあかりの声で焦燥を感じる。


なにを歌えば良いのだろうか……。


「ねぇねぇ! なに歌うの?」


うーん……。


「"夜に掛ける"かな……?」


「あ〜。あの小説が元になってた曲ねっ! 夜に電話を掛ける女の子との物語のやつだっ」


「そうそう。じゃあ、歌います」


♢♢♢



「ど、どうだった?」


ま、まぁまぁ歌えたかな?


「えっ。すごい……」


そう言った女子を区切りにザワザワと、上手上手と騒ぎ出す。


「と、というか冷夜、画面に点数出てるぞ……」


拓馬にいわれて振り返ると98点の文字。


「いや。きっと間違いだよ」


「「「「「「やっぱカッコいい……」」」」」」

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