第7話 【幕間】デュナミスと戦争
[エドガー・フロン著 『異能力者の歴史』より抜粋]
デュナミスとは、異能力者のことである。
しかし、一言で言い切ってしまうには、あまりに種類が多く、歴史も長い。
デュナミスがいつ頃から存在していたのか、多くの研究者がその謎に挑んだが、現在に至るまで判明していない。はっきりとした年代は不明ではあるが、研究者の間では「人類とともにデュナミスがあった」という説がもっとも有力である。
古代の記録には、人間とは思えない超人的な英雄たちの活躍が残されている。たった数百の兵で数万の軍を破った勇ましい戦士たち、蹂躙された祖国を救うために立ち上がって敵国を打ち倒した聖乙女、貧しい平民の出身でありながら奇跡のような勝利を重ねて皇帝へと昇りつめた男も、もしかしたらデュナミスであったかもしれない。
神話の世界の神々も、もしかしたら実在したデュナミスをモデルに描かれたのかもしれない、と思うのは、いささか空想が過ぎるだろうか。
では、どうやってデュナミスが生まれるのか。これについてもある程度判明している。デュナミスは「遺伝によって生まれる」ものと「突然変異的に生まれる」ものの二種類に分けられている。
デュナミスの子は高い確率でデュナミスとなる。両親ともがデュナミスであれば、さらに可能性は高くなるものの、その法則性などはまだまだ分かっていないことだらけである。
このように、デュナミスがデュナミスを生み出すと期待されることから、多くの国では爵位を与えることで、血統と戦力の保護に努めてきた。デュナミスの強さが、その国の戦力に等しくなるので、各国ともそうせざるを得なかった。
だが、突然変異的に生まれるデュナミスも一定数存在する。デュナミスとして異能力が確認できれば、平民であろうと爵位が与えられるが、良質な血統のデュナミスに比べて能力が弱い傾向がある。
とは言え、平民から皇帝へとのし上がったデュナミスもいた。能力が弱いとはいえ、当然例外も存在するのである。
デュナミスの能力、と一口に言っても、その種類は千差万別である。
多くのデュナミスが、身体能力が非常に高い。瞬発力、持久力といった運動能力は、常人を遙かに上回る。また、反射神経においても秀でており、飛来する矢を剣で斬り落とすことなど、彼らには造作もないことのようだ。
中には、身体能力が一般人と変わらない、というデュナミスも存在する。だが、彼らが劣ったデュナミスであるかと言えば、そうではない。
彼らは身体能力が高くない代わりに、人間とは異なった能力を持っていることが多い。
例えば、他人の精神に入り込む「ダイバー」であったり、驚異的な記憶力と知能を持った「ライブラリー」であったり、正確な未来予知ができる「ケイシー」と、数多くの能力がある。
もちろん、身体能力が高い者がこれらの能力を持っていることもあれば、複数能力を保有している場合もあり、まさに「人による」のである。
超人的な力を持っているとは言え、デュナミスも万能ではないのは、我々の歴史が証明している。
科学技術が発展し、銃が戦場に登場してから、デュナミスは戦争の表舞台から徐々に姿を消していった。多くのデュナミスは、矢を斬り落とすことはできても、鉛の弾に対応することができなかった。
もはや少数の異能力に頼る戦術は終わり、多数の一般人が戦場ではもてはやされた。もちろん、力のある者は生き残ることができたが、各地の戦場では剣を握りしめたままの朽ちていくデュナミスの死体が溢れていった。
こうなると、デュナミスを保護するための爵位は形だけのものとなり、税金を無駄遣いするだけの地位まで堕ちていった。
デュナミスは自然に消滅していくかに思われたが、彼らの存在が歴史の表舞台に返り咲いた。
それが「ダイバーメックの出現」である。
ダイバー能力による巨大兵器メックを扱うことで、デュナミスは戦場の主力となれたのである。
しかしながら、デュナミスの研究はあまり進んでいないのが現状である。各国で独自に研究をしているようなのだが、国際的には共有されていない。「ブロデア帝国が秘密の実験を行っているらしい」だとか「レディストでは新たな能力の開発に着手したらしい」といった噂はよく聞くが、信憑性としては怪しいものである。
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