Yuma.

|最初|

――


私がその猫と出会ったのは、5週間くらい前だった。


場所は母方の祖母の家。


夏休みに栃木に行った時のお土産を祖母に持っていこう、と母が車を走らせて30分。


そこで私は猫に会った。



もちろん、祖母が新しく飼いはじめた、というのではなかった。


・・・というのも、数日前からずっと家の周りをそれがふらふらと歩いているものだから、祖母は捨て猫かなにかだと思ったらしい。



それで、彼に水を与えてあげたのだ、と言った。


「今もどこかで水飲んでるよ」


そう言って案内されたのは、物置きの隅っこの小さな小屋だった。・・・ちょうどそこにスペースがあったから、猫の寝床を作ってあげたのだという。動物好きの祖父は進んで小さな毛布替わりのタオルケットを敷いたり、水入れを探したりしたらしい。


🐈

― 私が初めて猫を見たとき、その毛並みはお世辞にも綺麗とは言えなくて、足がとてもやせ細っていた。


こんな小さな子猫が、捨てられたなんて。今まで動物に触れたことのなかった私は、目の前の小さい生き物にしばし思考を巡らせた。


が、大分弱っているのが遠くからでも見て取れた。でもその眼は純粋で、綺麗で、真っ直ぐだった。― 私は彼をもっと見たくなって、物置きの外からそっと近づこうとした。でも、それは叶わなかった。彼は敏感に気配を感じ取り、車の奥へすばやく逃げてしまったのだ。


そうか。まだ人間は怖いんだ


・・・もう陽が傾きかけていたし、祖母は


「もうちょっとしたらあなたに慣れてくれるわよ。」


とフォローしてくれたので取敢えず私は家に入ることにした。やっぱり彼のことは少し気になったけれど。




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Yuma. @meemo

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