第25話 やはり、空から女は振って来る

 周りには既にオークの姿は見えず、直人たちは集落の中へとはいる。中はオークたちが居ない為、静かなものであった。直人は建物の中を探索していく。


 探索した結果、集落の中にはテルの言う様な女騎士は見つからなかった。いや言い換えよう、生き物自体が居なかったと。集落の中には金目の物のなく、退屈したテルはふと空を見る。


 天気も良く空は青く澄み渡っていた。それは元の世界で見るものよりも美しく感じられ、テルは(大気汚染されてないからっスかね。綺麗っスね~)と思っていると、空に赤い点を見つける。


「なんスかねアレ」


 テルがそう呟くと直人は空を見上げ、


「あの赤い点の事か? ダニエルあれはなんだ?」


というと同時に凄い速度でソレは直人たちの目の前に落ちた。


 ズドーンと凄い音を立て辺りは土煙が巻き起こる。


「なんスか、なんスかー?」

「ゴホッゴホッ、皆無事か?」


 あまりの土煙に仲間が見えず声をかける直人。


「ダニエルは無事ですぞ、主殿」

「無事っスけど、何も見えないっス」


 直人の問いにダニエルとテルが答えると双子も続いて続く。


「私たちは大丈夫です」

「あぁ、無事だよ」


 皆の確認が取れた頃、土煙が薄れ始め辺りが見え始める。直人たちは驚いた。直人たちの目の前には大きなクレーターが出来ていた。


「なんスかこれ?何が降って来たんスか?」


 テルはそう言い、クレーターに近づいて行く。直人たちもテルの後を追い近づいて行く。


 先にクレーターに近づいたテルは驚き、目をパチパチさせる。目の前に見えるモノが余程信じられないのか、テルは手で目を擦ると、再度クレーターの中を覗き込んでいた。


 直人たちも遅れクレーターに近づき、驚いた。クレーター中心には長身な女性が立っていた。驚くべき事にその女性はバトルスーツもしくはバトルアーマーと呼ばれそうな、近未来的な装備を身につけていた。


 腕や足には大きな機械のアーマーが付いていた。腕部分のアーマーは巨大で掴めばオークの頭を粉砕できそうに見え、足のアーマーにはエンジンノズルの様な物が幾つも着いている。頭にはヘルメットの様な物をかぶっていて口から上半分が見えない。だが、ピッチリとしたボディースーツを着ていて体にもアーマーは着いているのだが、胸には着いておらず、その大きく豊かな膨らみが女性だと教えてくれる。


「やはり、損傷状態での大気圏突入には無理があったわね。ちっ、動かないわね。システムチェック……ダメね、完全に焼き付いているわ。アーマー解除」


 彼女が一人で呟き始め、アーマー解除と言い終えた瞬間、足や腕などについたアーマーなどのがプシューと音を立て外れた。外れて彼女は地面に立つ、すると装備が外れた事で、彼女のスタイルが顕にになった。まるでモデルの様な均整の体系でありながら、その体はとてもよく鍛えられていた。


 彼女は装備を外すとヘルメットに手を当て、


「GS起動、現在地の特定を……受信範囲外ですって!? ココ何所なのよ。私はジードと戦っていて被弾をして……ブラックホールに吸い込まれたんだった!」


彼女は再びヘルメットに手を当て、


「あちゃ~やっちゃったな~。装備も全部使い物にならないのに未知の惑星で一人でどうしろっていうのよー。あぁ最悪だわ、どう――」


 彼女は嘆いていると、ふと近くにいた直人たちに気づき焦る。


 現地人とのファーストコンタクトなのだ。彼女には、この世界の文明レベルは不明である。さらには現地戦力が不明な上、彼女は既に武器と装備を失っていた。現状を考えれば、何としても良い関係を結びたいところである。しかし、相手次第ではそうも行かないだろうと思い緊張感は増す。


彼女は直人たちの方に向き直りながら、(見た感じは野蛮そうには見えないわね。言葉通じるのかしら?)思いながらも直人たちに声をかける。


「初めまして、私は人類統合軍、第9艦隊所属、クラリッサ・クラ―リ少佐です。この惑星には止む無く不時着しただけで、侵略や交戦の意思はありません」


 クラリッサが声をかけても、直人たちはポカーンとしていて反応しない。この時直人たち全員が(人類統合軍ってなんだ!? 不時着? 落下の間違いでは?)とツッコミどころが満載で反応出来なかったのだ。


 反応がない事に焦った様子を見せながら、クラリッサは、


「言葉通じていますか?あの~――」

「ああ、大丈夫ですよ、ちゃんと通じてますよ」


 衝撃から立ち直った直人が、そう答える。だがあまりの展開に厨二モードは切れていた。言葉が通じると分かったクラリッサは、


「それは良かった。でどうでしょう、出来れば友好的な関係を築きたいと思っているのですが。いかがでしょうか?」

「自分たちも交戦の意思はありません。クラリッサさんの言われる友好的な関係がどのようなモノかにもよりますが、仲良くと言う事なら問題ないですよ」


 直人がそう答えると、クラリッサはヘルメットを外した。ヘルメットを外すと紫色の髪がなびいた。印象的なのはその眼つきだろう。とても鋭い眼つきで軍人ならではのものだろう。


 それは数多くの戦場を潜り抜け、命のやり取りをしてきた者の特有なモノだ。ただ、目が鋭いだけではなく、独特な雰囲気を放っている為、カイの鋭さとは違い、どちらかと言えばGさんに近いといえるだろう。


 とは言え、顔立ちは整っており美人であり、長身でスタイルがよく、紫のロングヘアはとても綺麗なのだ。まるで海外の女優の様である。


「ヘッドアーマー越しに、失礼しました。良ければ名前を教えてもらえませんか?」


 そう言われ名乗るのを忘れていた事を恥ずかく思ったのか、直人は照れながら、


「相沢直人です。よろしくお願いします。」


 その後、ここにいる皆が自己紹介を終えると、クラリッサさんにこの世界の事や自分たちの説明を始めた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る