第77話 角あるもの再び。

 僕とちるなはその黒い山羊を知っている。

「ケルノンクス!」だ。


 2メータはあったあの背丈だけが異なり小さな子山羊の大きさ。


 僕とちるなはあの日道標となるケルノンクスを失って以来、思い描く心音に従いここまでを進めて来た。

 悠久の記憶が呼び覚まされる度に省みる部分が出来軌道修正も行った。

 でもやはり道標がない事の不安は大きく。

 またその行いの起源と期限も朧げで単に進む歩みという形だった。


 道標不在に甘んじる事の覚悟も芽生え、共に歩む仲間たちとの作戦会議を重ねる内にその者らの安寧と繁栄、それを担保する安全施策に視点は据えていた。


 けど、ケルノンクスの言葉は僕の背中に冷や水を流した。


 井の中の蛙を整える事に専念し過ぎている。


 シャングリ・ラの現出の為には、この世界を見極める必要がある!

 これは緊急の課題。


 道標、ご意見番はやはり必要不可欠。

 これは打ち出した方針自体も見直す必要がある。

 考える考える。


「ホホッッホ、相変わらず素直でヨロシイ」メぇヘヘ。

 先ずは一つの懸念を解消して進ぜよう。

 我はチルナノーグ、此の地でクトゥールの追跡を躱す為に自らを消滅させた。

 我が居たのは劔山脈の中じゃったがこのシャングリ・ラの地の厖大な生命力で復活蘇生が早期に叶った。

 雪女の長、絶対零度地獄の姫君雪姫が此の地にわしを連れて来てくれたお陰。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る