反乱軍鎮圧 02
フランは各艦が補給をしている時間を利用して、会議室に集まったメンバーにこれからの行動を指示する。
フランは、まずロイクに指示を出す。
「我が艦隊は補給が済み次第、主星パリスに進軍を開始する。童…アングレーム代将の艦隊は先陣として、本隊の前衛を務めよ。道中でおそらく、反乱軍艦隊が置いてきた戦艦と補給艦との戦闘になるであろう、故に索敵は常に怠らないようにせよ」
「はっ」
ロイクは”童”の言葉に反応せずに、普通に了解の返事をする。
意外とTPOはわきまえるようだ。
続いてフランは、クレールとルイに指示を出す。
「クレールは、この艦に移乗して参謀として私を補佐しろ」
「了解しました」
「ルイは続けて、私の副官として色々サポートだ」
「はっ」
(色々ってなんだ?)
彼は返事をしたが、自分の役割を見いだせずにいた。
実際クレールがいれば、戦闘がなければルイは必要ない。
フランにとって、今の所ルイの存在は側にいるだけいい要員で、彼もその事は薄々気付いており、頑張ろうという思いと自分の目標は小説家ではないかという矛盾した考えを、彼は抱いてしまう。
フランは最後に、ヨハンセンに指示を出す。
「ヨハンセン代将、貴官は一週間ここで宇宙機雷の撤去作業を監督した後、父上…国王夫妻を護衛しながら、主星に来てくれ。その頃には反乱も鎮圧しているだろう」
「はっ」
彼女は両親を、ロイクではなく頼りになると思ったヨハンセンに任せることにした。
「作戦の指示は以上だ。補給が終わりしだい作戦行動に入る。では、解散してよろしい」
彼女が解散の号令をだすと一同は敬礼をして、フランが答礼すると一同はルイと彼女を残して会議室から出ていく。
ルイが少し元気のない顔をしているのに気付くと、フランは彼に近づきできるだけ顔を近づけると言葉をかける。
「ルイ、そんな顔をするな…。お前が側に居てくれるから、私は恐れずに突き進むことが出来るのだからな」
「フラン様…」
ルイがフランのその言葉で、少し心の靄が晴れた気がした。
だがフランは、至近距離のままいつものヤンデレ目になって、注文を突きつけてくる。
「更に言うなら、他の女に目移りしなければ、なおよしだがな…」
(この眼怖い!)
ルイが怯えていると、フランが名残惜しそうに彼から顔を離すとこう言った。
「では、いこうか。我らが懐かしき故郷パリスに」
補給が済んだフラン艦隊は、作戦行動に乗っ取りロイク分艦隊を先頭にして、機雷原を上方向から迂回して突破すると、主星パリスに向けて進軍を開始する。
惑星ア二アン付近の宙域を進発して三日経った頃、何事も起きずに暇を持て余していたルイは、小説を書いていたが煮詰まり話を考えていると、考えは自然に残った反乱軍艦隊の行動に移っていく。
(敵の落伍した戦艦や補給艦は、こちらに向かって来ているのか?)
”本隊が全滅して通信が途絶えてから既に三日経っており、普通の指揮官なら本隊が敗れ去ったか何かあったと考えて、引き返すのではないか?”
少なくとも自分ならそう考えて、後方からの追撃艦隊を避けるルートを通って撤退する。
そうなると、50隻単位の小艦隊だから補足するのは難しく、放置するにも危険な数であるために各星系の索敵の網に掛かるのを祈るしか無い。
ルイがそのように考えていると、彼の背後ではフランが彼のベッドに寝転びながら、携帯端末で送信されてくる情報を確認するという、仲の良い女の子が無防備でベッドで過ごすというラブコメでよくあるシチェーションを演出していた。
ルイは自分の推察を、背後にいるラブコメヒロインに話すと、彼女は端末を操作しながらこう答える。
「私もその懸念は持っていたから、逃走しそうな経路の基地には索敵を命じておいた。入って来ている報告によると、どうやらオワース星系のボーウェまで進軍して、そこから東のエーネ星系方面に逃走したそうだ」
反乱軍残存艦隊は、本隊と連絡が取れなくなって3日後に、本隊が敗北したと判断し撤退を決めた。南から追撃艦隊が来ているのは解っていたので、東から主星パリスのあるイル=ド星系を迂回して南下し、祖国である【サルデニア王国】まで逃亡することにしたのである。
「まあ、大丈夫だろう。ガリアルム艦隊から派遣された討伐艦隊2000の指揮官は、リュシエンヌ・レステンクール少将だからな。あの人なら、敵の逃走ルートを想定して進軍しているだろう」
フランはルイのベッドの上に居座りながらそう言った。
その討伐艦隊の指揮官リュシエンヌ(愛称リュス)・レステンクール少将は、20代中盤で【ガリアルム王国】で五指に入る名門<レステンクール家>出身であるために、この若さで少将に任官しているが、才能もその階級に相応しい人物である。
彼女は主星パリスに到着すると、まず艦隊を4つに分けた。
まず、一つ目は100隻で主星パリスの反乱軍討伐及び宙域の維持の任務を与え、残り3つの艦隊には、パリスからソンム星系へ向かう3つのルートをそれぞれ進軍させる。
撤退してくるかもしれない敵艦隊500隻を想定し、確率の高い東と中央ルートにそれぞれ700隻、遠回りになる西のルートには500隻と割当て直ちに進軍させた。
リュスは迅速果断に部下に指示して、行動を開始させると部下のマルグリット・マルソー大佐がこのように進言する。
「艦隊を分けるのは、兵力分散の愚を犯すことになりませんか?」
その進言を聞いたリュスは、冷静に彼女の進言に反論した。
「今回相手は500隻と解っているわ。なら、同兵力かそれ以上の兵力なら大丈夫なはずよ。むしろ撤退してくる敵艦隊を逃さないためにも、素早く移動して退路を遮断することを第一とするべきではないかしら?」
「確かに、その通りだと思われます。急いで各員に命令を伝えます!」
マルグリットは上官の状況分析を聞いて納得すると、すぐさま敬礼して指揮官の命令を伝えに行く。
(それに今回私達が戦うことになるのは、撃ち減らされて敗走して来る残存艦隊のはずだから、数を心配する必要はないわ…)
こうして、リュスの迅速な行動が功を奏し、彼女の艦隊はフランが戦場から発して五日後にエーネ星系で、低速である反乱軍残存艦隊を補足することに成功する。
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