第1章 反乱軍討伐戦
反乱勃発 01
同盟国【エゲレスティア連合王国】の王立士官学校に、留学をしていた【ガリアルム王国】の貴族の子息ルイ・ロドリーグと王女フランソワーズ・ガリアルム(フラン)は、彼女のホームシック(?)を理由に留学先から宇宙船で帰国の途にあった。
彼らを乗せた宇宙船が国境付近の惑星カレイに差し掛かった時に、本国での反乱の報告を受ける。
報告を受けたフランは、すぐさま周辺に駐留している守備艦隊に通信を送り、首都星パリスと惑星カレイの中間に位置するソンム星系の惑星ア二アンに、集結するように指示を出し自らも宇宙船をそこに向かわせた。
惑星ア二アンに向かう道中、次々と反乱について情報が入ってきており、その情報によると事の始まりは四週間前に遡る。
ガリアルム王国の南に位置する【サルデニア王国】側の国境に、サルデニアの艦隊3000隻が配置されたとの報告が国境守備艦隊から防衛省に届く。
その報を受けて、軍令部で迎撃の艦隊数をどれくらいにするか議論が行われる。
ガリアルム王国は各惑星の守備艦隊を抜いても、7000隻を動員することができた。
相手の数に併せて3000~5000隻にして、何かあったときの予備の艦隊を残すか、7000隻全てで迎撃するかで議論が繰りひろげられる。だが、<戦力は逐次投入ではなく、持てる最大戦力を投入せよ>という戦術の鉄則に従い7000隻全てで出撃することに決まった。
二日後に出撃準備を終えた艦隊は、艦隊司令長官アンドレ・バスティーヌ大将が直接指揮を取りサルデニア王国との国境に出撃する。
首都星パリスからサルデニア艦隊が、配置されている国境までは五週間の行程を要す。
ガリアルム艦隊が出撃してから、二週間後にフランがホームシックに掛かったと言い張って、ルイを伴ってパリスに旅立つ。
同じ頃、領地に引き篭もっていた貴族達も、非武装船に偽装した戦闘艦で首都星パリスに向け出航する。
そして、ガリアルム艦隊が出撃して四週間後、フランが帰国の途について二週間後、艦隊の居なくなった首都星で、改革で特権を奪われた一部貴族と官僚による反乱が起きた。
それに伴い、首都星パリスのあるイル=ド星系の外縁部に集結していた貴族達の艦隊が、首都星を制圧するために進軍を開始する。
貴族達の艦隊はサルデニア王国の援助を受けて、総数約500隻になっており首都星警備艦隊の数を優に超えていた。
逆に言えば、貴族達は500隻程度しか集めることが出来ず、首都星系に駐留しているガリアルム艦隊7000隻の敵ではない。
そのためにサルデニア王国は支援している反乱軍の為に、国境に艦隊を配置してガリアルム艦隊を誘引し首都星から引き離したのであった。
最大の懸念は7000隻全てで出撃してくるかどうかであったが、貴族達は作戦を統括する軍令部所属の人間を買収して、作戦会議で<戦力は逐次投入ではなく、持てる最大戦力を投入せよ>の流れに持っていく様にする。そして、見事に全艦出撃させる事に成功し、首都星星系には守備艦隊の100隻のみとなった。
さらに、ガリアルム艦隊が反乱に気付いて引き返してきても間に合わないように、艦隊が国境近くに到着する頃に反乱を起こす。
ガリアルム艦隊に超光速通信で首都星における反乱の通信が届くと、バスティーヌ大将は巡洋艦、駆逐艦といった足の速い艦を2000隻引き抜くと反乱軍討伐に差し向け、残り5000隻でサルデニア艦隊と睨み合う。
足の速い艦とはいえ国境付近から、首都星までは三週間はかかるために反乱が順調に進めば間に合わない計算であった。
反乱軍の計画では、首都星で反乱を起こした者達が素早く国王夫妻を捕まえて、貴族達の艦隊で守備艦隊を撃破する。
そして、捕らえた国王夫妻を人質にして、ガリアルム艦隊とその他軍部を降伏させ、その後に国王を脅し傀儡として自分達の特権を回復させて、政治の実権を握るつもりであった。
だが、首都星の反乱部隊が電撃的に王宮へ向かうと、そこに国王夫妻の姿は無く既に逃げ出した後であったのだ。
反乱部隊指揮官は、王宮を監視していた者達の責任者に話を聞く。
「そういえば、五時間前にトラックの荷台にプーレちゃん四体を連れた広報部の女性士官が、王宮に入っていって一時間後に再び出ていきましたが……。まさか、あの四体のプーレちゃんの中に国王夫妻が!?」
責任者の報告を受けた指揮官は、彼らを怒鳴りつける。
「どうして、中身を確認しなかった!」
「まさか、国王夫妻がプーレちゃんに入って、トラックの荷台に乗るとは思わなかったもので…。それに、まだ反乱前だったので確証もなしに、下手に騒ぎを起こすのはどうかと思いまして…」
監視部隊責任者の判断もある意味正しかった。
何の権限もない彼らが、王宮内から出てきた広報部士官とプーレちゃん達を引き止めて、更にその中身を確認すれば、王宮の衛兵も黙ってはいないであろう。
それに彼の言うとおり、国王夫妻がキグルミであるプーレちゃんの中の人となり、しかもトラックの荷台に乗って運搬されるなどありえることではなかった。
(しかし、五時間前とは……。我らが反乱を起こすことが漏れていたとしか……。我らの中に、スパイがいるのか?)
指揮官はそう推察しつつも、すぐさま部下に指示を出す。
「とにかく、我々も急いで宇宙港に向かうぞ! あと、今すぐ艦隊に連絡! <国王夫妻は宇宙に脱出した、今すぐ追撃求む>と!」
だが、時既に遅く国王夫妻は、トラックで宇宙港までプーレちゃんとして運搬されて、そのままそこで待機していた高速輸送艦を改造した特別艦に乗艦することになる。
といっても、元は輸送艦なために居住性はあまり良くはないが、軍艦に比べればましであるが、国王夫妻が乗艦するにはかなり粗末であった。
特別艦は守備艦隊に護衛されて、ソンム星系の惑星ア二アンへと進路を取る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます