第3話 突然の訪問者

 翌日の朝。

 俺は自宅のリビングにて、朝食の食パンをかじっていた。

「お兄さんは昨日、大変でしたね」

 テーブルの向かい側で座る中学二年の妹、パジャマ姿の奈帆が心配そうに話しかけてくる。ボブカットで普段物静かな奈帆の様子にしては珍しい。

「まあな」

「その、お兄さんを襲った人は、また出てくるかもしれないですね」

「かもな。一応、警察が周辺のパトロールを強化してくれるとは言ってたけどな。まあ、しばらくは夜、あまり出歩かないように気を付けるくらいだな」

「そうですね」

 奈帆はうなずき、コップの牛乳を口につける。

 奥のキッチンでは俺や奈帆の弁当を作るため、母親が忙しなく動いている。夕飯のクリームシチューのために牛乳を買うよう頼んだことを昨日、謝っていた。俺としては特に必要ないと思ったのだが、親としては子に危ない目を遭わせてしまったことを申し訳なく感じるようだ。

 一方で、俺の脳裏では、昨日襲ってきた相手が誰か、見つけようと考えていた。

 おそらく、犯人は俺のクラスメイトだ。

 何となくだが、警察には黙っていることだ。というより、話したら、変に色々と事情を聴かれるのが億劫になっただけ。後は何だろう、変に、自分の力で相手を見つけてやるという妙な使命感が出てきてしまっている自分がダメなのかもしれない。

 目の前で朝食を取り終え、身支度をしに、リビングを出ていく奈帆。両手を合わせ、「ご馳走様でした」と言って頭を下げる律儀な妹だ。変に兄を襲ったのがクラスメイトだとか漏らしたら、奈帆に迷惑をかけてしまうかもしれない。いや、もう、そもそも、警察に黙っていること自体、既にまずいかもしれないが。

 と、家中をインターホンの電子音が鳴り響く。

 奈帆は家の二階にある自分の部屋でセーラー服に着替えてるはず。母親はキッチンで忙しそうだし、父親はもう既に会社へ向かっており、いない。

 となると、俺か。

 残っている食パンを残し、俺はリビングの壁についているインターホンのパネルへ向かう。

 平日の朝から、どういう訪問者だろうか。

 俺はパネルに映る玄関前の画面へ視線を移すなり。

「はっ?」

 突然のことに、俺は間の抜けた声をこぼしてしまっていた。

 幻覚かと思い、俺は瞼をこすり、頬をつねってみてから、再度確かめる。

 間違いない。

 インターホンのパネルにある画面には。

 昨日告ってきたクラス委員長、白瀬志穂の姿が映っていた。

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