上戸美姫

22-1

 ふざけるな。

 きっとはらわたが煮えくり返るとはこういう状態を指すのだろう。

 信じられない。

 教室に置いておいた下着がなくなっていたことにまず女子トイレの中で焦った。

 気が動転して、何度も何度もプール鞄の中をまさぐってみるが自分のパンツは見つからなかった。

 もしかして教室に忘れたのだろうかとも思ったが、それなら奈々子がきっと気づくはずだ。

 どこに消えてしまったんだろうと思い悩んでいたら、君津雄大と松成敬輔の会話が聞こえた。

 間違いない。パンツを盗んだのはあいつらだ。

 しかも。

 しかも信じられないことに、その下着を履こうとしていた。

 ありえない。

 謝って反省の色を示してくれたら、まだ大事にはしないでおいてやろうと思えた。

 けど、しらばっくれるのならもう許さない。

 この学校で生きていけなくしてやる。

 帰りのホームルームで思い知らせてやる。

 上戸美姫は下からの視線に怯えながら、ゆっくりと階段を下りた。

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