第12話 「学校祭」 その23


————☆


「ねえ、起きて」


 うっすらと開いた瞼の隙間から、よく見た顔が写っていた。くっきりとした大きな瞳に、こちらに垂れた焦げ茶色の髪、まあ見て分かる通り僕の義妹だった。


「ん……ぁ、ああ……」


 今日も今日とて、晴天な朝だ。カーテンの隙間からこちらを覗く陽の光に軽く会釈をしながら目をくっきり開けると不思議そうにこちらを覗く四葉がいた。


「……ん、どうかしたか?」


「え、あ、いや……なんで急に会釈してるのかなと……」


「うーん、なんとなく」


「そ、そうですか」


「うん」


 すこし俯く彼女、朝から少しだけテンションが低いが一体どうしたのだろう。


「……四葉?」


「っ、あ、すみません……そのご飯できたってお母さんが」


「お、ほんとに? じゃあ食べるとするか……」


「は、はい……」


 目線が泳いでいる。


 僕、また何かやらかしたのかな? それとも、前言っていた僕が何もわかってないとか何とかいうやつなのか、もしかして?


「四葉、目線が泳いでるけどどうしたの?」


「……っな、なんでもないですっ」


「いやでも」


「いいから……早く朝ごはん食べないと! 学校に遅れます!」


「え、でも……」


「ゆずと……いいから」


「は、はい」


 急に睨みつける四葉に勝てず、僕は部屋を追い出されてしまった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る