第9話 「第一次奪取戦争」 その8
え、まじで?
僕の疑問は、虚空に響いた。
今、僕は浴室前の洗面台で服を脱いでいた。ん、まてよ。これは本当にいいのか? 焦りが、胸の内で高まっていく。果たして、一端の高校生がこんなことをしていいのか、いくら妹と言えど義理は義理だ。
「ゆずとぉ~~ぬ、ぎま、した?」
「ひゃっ、あ、いや、まって‼‼」
「う、うん」
途端に体温が上がった。
よく考えてみろ、この後は四葉がここで裸になるんだぞ! そんなことあっていいのか、え、僕たちはこれから保健体育の勉強でもするのか⁇ あ~~やばい、まじでやばい‼‼
「な、なぁ四葉」
「ん、何です、か?」
「そ、その、お風呂なんだけど……」
「は、はい」
自分から言っといてなんだが、こんなのだめだ。別に僕にはそのプライドなんてない。やっぱり中止にしたほうがいい。そう思い、彼女に告げる。
「やめないか?」
「え」
「いや、その、いくら兄妹でもさすがにやばいかなって……」
「……」
無言。
臆病な僕の言葉に四葉は無言になった。それもそのはず、さっきまで優位に立って彼女をいじっていた僕が弱腰を見せているのだ。彼女も驚きはするだろう。
「——は、はずかしい?」
すると、震えた声で返答が返ってきた。
「え。」
「その、やっぱり、はずかしいのかなって……」
「ま、まあな、言った癖にだけど……それに、女子がそんな裸なんて見せるもんじゃないし」
「そ、それはごもっともです。でも、男の子だってダメですよ」
「う、はい」
途端の正論。
その並びに答えることはできなかった。
「で、でも四葉も脱いじゃったし……せっかくなら、下着だけつけて入りませんか?」
「し、下着?」
「は、はい……水着みたいなものかなぁって……」
「四葉がいいなら、僕は良いけど」
「じゃ、先に入ってください……」
分かる、見なくとも分かったが浴室の向こう側にいる四葉の頬は赤くなっていた。
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