第8話 「救世主女たらし伝説」 その9

 

 いいや、ひどい言い草とかそういう話ではなくて普通にひどかった。なんなんだ、この部活には頭のおかしい奴しか入っていないのか。


 もう一度、二人の先輩を見るとその切り替えに少々驚いたが烏目椎奈と話していた。双方、笑顔で楽しそうではあるためもう一度それを問う意味はないが、僕の様な常人にはついていけるような話ではなかった。


 見た目がギャルの読書好き(今日はサボりのため不在、彼氏とデートらしいが週一で一緒にいる男子が変わっているため本当に彼氏なのか、それともそう言うあれなのかは不明だ)に。


 性格が少しきつめな赤髪サイドテール読書オタク(今週はずっと吉村昭の本を読んでいるが、息抜きにドストエフスキーの『罪と罰』をすらすらと読み進めている。この小説をブレイクタイムに読む人間は恐らくこのイカレテイル先輩しかいないだろう)に。


 今度こそ性格が最悪のドSのモテモテハーフ(楽しそうに烏目椎奈と話しているが、ちらちら枢木こと赤髪サイドテールの手にある小説を見ている)に。


 同学年のSっ気のある元気系ワイワイ巨乳女子(枢木先輩とのポジションを代わって烏目椎奈とニコニコ笑っているが今にでも彼女をいじめたいらしい)に。


 僕の隣で頬を淡い桃色に染めている現家族兼元幼馴染(特に言えることはないが、彼女のことは普通に好きだ。ただ、僕には先の告白を受け入れることはできない……)に。


 そして、頭のおかしい超清楚系美女で百合の部長(黙々と部活動の用紙を記入している。顔だけを見れば綺麗なのに、ほんと余計なところで株を下げるからなこの人は。学校でも噂のレズになっているのが少々怖い所でもある)。


 この部活はやっぱりおかしい。


「どうした、洞野兄?」

「あ、別になんでもないですよ……」


 ふと僕に視線を向けた部長の一言を軽くあしらって僕は言った。


「ちょいとトイレ行ってきます」


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