第163話:魔人と戦うことになったんだが③

 神の加護を使用し、身体能力を強化しておく。それから、できるだけ村に余計な被害を出さないよう攻撃範囲が狭めて『フレア』を放つ。


 魔人はベースが人間ということもあり無属性らしいので、今回は火属性を選んだ。どの属性を選んでも有利になることはないが、火属性魔法は一番よく使っているため、使い慣れているアドバンテージがある。


 ドゴオオオオオオンンンッッ!!


 火属性のフレアが魔人に直撃し、炎に包まれた。


 このステータス差であれば、普通は大ダメージになったはずだが——


「そ、そんな……」


「ユーキの攻撃が効かないなんて……!」


 魔人のスキル『硬化』により俺の魔法は攻撃が通らなかった。アレリアとアイナは初めての俺の苦戦にかなり驚いている。


 この驚きの中には、不安も含まれているのが伝わってきた。


 今度は魔人が攻撃を仕掛けてきた。


 人間離れした跳躍でジャンプし、拳を振るう魔人。


 とはいえ、厄介なのは異常な防御力だけ。ステータス差があるため、俺にとって魔人の攻撃を避けることは造作もない。


 軽い身のこなしで魔人の攻撃を避けつつ、作戦を考える。


「まずいな……避けてるだけじゃダメだ。どうすれば……。ん、そうか!」


 一瞬、魔人に勝つ術はないんじゃないかと諦めかけてしまったが、所詮は防御力の超強化はスキル由来のもの。ここを突けば良い。


 スキルには、『再使用時間』なる概念がある。俺が持つスキルは再使用時間が短いものばかりなので気にしたことがなかったが、それでもほんの一瞬だけ連続使用できない空白の時間が存在する。


 連続で攻撃することにより、『硬化』が途切れた一瞬に当たった一撃で生命力を刈り取ればいい。


 そうと決まれば——


「アイナ、俺と同時に攻撃を頼む」


「わ、分かったわ!」


 攻撃の数が多ければ多いほど良い。『火球』を十連族で発射し、どれか一撃だけでも当たることを狙う。


 俺の火球が発射されるとほぼ同時に、アイナの弓から放たれた矢も魔人に向けて飛んでいった。


 ドゴオオオンッ!!


 俺の火球が先に魔人に着弾し、遅れてアイナの攻撃が衝突。


 これで『硬化』を破れたんじゃないか——と思ったのも束の間。


「これでもダメなのか……!?」


 またもや魔人に有効な攻撃を加えることは叶わなかった。


 『硬化』はどうやら攻撃が当たった一瞬だけ発動するものではないらしく、一定期間持続するタイプのスキルのようだ。


 だが、一つ気づいたことがあった。


 魔人のステータスを確認すると、生命力がほんの少し減少しているのだ。


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 名前 :クレッグ・リドラー Lv.70

 クラス:魔人

 スキル:『硬化』『撹乱』

 HP :76621/76897

 MP :43579/44555


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 さっきの俺のブレスでは2くらいしか変化していなかったので、今回もおそらく俺の攻撃によるものではない。


 ということは、アイナの攻撃が効いたのだろう。


 俺とアイナの攻撃の違いは、魔法と弓……いや、これは関係ないだろう。さっき剣で攻撃していたカインの攻撃も『硬化』で防がれてしまっていた。


 何か別の要因があるはず……。


「あっ、そういうことか!」

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