第151話:摘発に来たんだが②
俺は、ポケットから鍵を取り出した。この鍵は事前に宿の管理人から借りてきたマスターキーである。これがあれば、自由に鍵が開けられる。
「入るぞ」
アレリアとアイナに伝え、扉を開けた。
部屋の中には、俺の予想通り合計で四人。
中にいる業者たちはまさか突然扉が開くとは思っていなかったのだろう——
「だ、誰だ!?」
かなり混乱しているようだった。
「ここで変な商売してるって話を聞いたもんでな」
ミーシャとアリスの応対をしていた男は、俺の顔を見た瞬間に顔を歪めた。
「お、お前は大公爵……なんてこった……ガサ入れか!」
こりゃ色々と自己紹介の手間が省けて大助かりだな。
「おいおい、ビビるこたぁねえだろ。色々噂には尾ひれがつくもんだ。よく見てみろ、ただのガキだぜ」
部屋後方にあるソファーに腰をかけたインテリヤクザ風の男がそのような感想を披露した。こいつがこの組織のリーダーか。
「確かに……」
「ヘナっちいし大して強くなさそうだよなァ」
「アニキの言うとおりビビることねえな」
急に余裕を見せる三人。
俺の実力が本当は大したことないのであれば、わざわざ危険を犯してこんなところに来ないわけだが、頭が悪いのか?
いや、犯罪に手を染めるくらいの輩なのだ。割に合わないことをしてしまうという意味では頭の出来が良くないのだろう。
「やっちまえ!」
「「「うっす」」」
リーダーの指示で、三人が一斉に俺たちに襲いかかる。
部屋の中だというのに、大きな剣を横なぎに振る二人。
扉ごと吹き飛ばす威力の火球を後方から放つ一人。
やれやれ、舐められたものだな。
俺は、結界魔法を展開。
二本の剣と火球が同時に衝突するが——
キンッキンッキンッ!!
「なっ、攻撃が届かねえ!」
「意味わかんねえぞ!」
「話がちげーじゃねーか!」
所詮は冒険者になり損なった程度のチンピラ。恐るに値しない。
俺が結界魔法を解除したタイミングでアレリア、アイナ、ミーシャの三人が動き出した。
「はい、確保しました!」
「こっちも捕まえたわ」
「観念しな」
奥にいるリーダーの男以外の全員の確保が完了した。
三人は結束バンドで三人の手足を縛っていく。
この結束バンド、帰国してから暇だったので作ってみたものだ。
以前使っていた手錠と効果は同じで身体を拘束するとともに、魔力を制限できる。だが、こっちの方が嵩張らないし軽いので使いやすい。
「なんだと……この一瞬で……くそ、俺だけでも!」
一人だけ逃げようと窓に飛び込むリーダーの男。
だが、考えが甘いな。
ドンッ!
窓を破ることなく、見えない壁に跳ね返されてしまう。
「がはっ……」
強烈な痛みだったのだろう。一瞬にして気を失ってしまったのだった。
この程度のことも想定していないと思われてしまったのだろうか?
俺は、逃げられないよう、部屋に入った直後に全体を結界魔法で囲むことで隔離しておいた。
そうじゃなくてもガサ入れなら外にも人を配置するだろう、普通は。なんとも間抜けな奴らである……。
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