第144話:助けてみたんだが③

「うん」


 アリスは涼しい顔で言う。


 直後、アリスが魔力を消費する。アインたち三人の周りに三つの幾何学模様——魔法陣が同時に出現した。


 その魔法陣からは白い光が溢れ出し、鶴のような白黒ツートンカラーの美しい鳥が出現した。


 アリスが召喚した鶴はアインたち三人を掴み、空高く飛び立った。


 オークが槍を投げるが、軽い身のこなしで避けてしまう。今は悠長にステータスを確認することはしないが、かなりのステータスがありそうだ。


 アリスが召喚士であることは聞いていたが、かなりの実力者で間違いない。


「サンキュー、アリス」


「うん」


「じゃ、新魔法を試しつつ……一撃で仕留めるか」


 俺はそう呟き、魔法の準備に取り掛かる。


 これだけの数がいると、一体ずつ倒すのは面倒だ。


 アリスの冒険者としての能力も十分把握できたし、もう済ませてしまっていいだろう。


 緑のない荒れ果てた土地なので、心置きなく使えそうだ。


「スイ、高度を二百メートル上げてくれ。アースは俺たちの後ろにいてくれ」


 スイが俺の指示通り高度を上げ、アースはスイの後ろへ。アリスが救出した冒険者たちはアースの方へ避難が完了した。

 このタイミングで、『結界魔法Lv.3』を使用。俺たち全員を囲む巨大な結界を構築する。


 『神の加護』を使うことで能力を引き上げておくことも忘れない。


「強化魔法いる?」


「頼む」


「はい、どうぞ」


 ミーシャの強化魔法による能力値向上も合わさったことで、最高の環境が整った。たかだかオーク百体ちょっととオークキングを倒す程度では過剰だが、過剰で困るわけでもない。


 大は小を兼ねるのである。


「じゃ、行くぞ」


 俺が考案した新魔法『メテオスコール』。


 『火球』『水球』『地球』『風球』『聖球』『闇球』——あらゆる属性の魔力弾を雨の如く降らせる魔法である。 かなり雑な魔法だが、魔物への有利属性など何も考える必要がないので雑魚をまとめて相手するには最適だ。


 俺たちの百メートル下、上空に直径百メートルほどの魔法陣を展開。


 展開から数秒とかからずに発動——


 ドガガガガガガアアアアアアアアァァァァ————‼︎


 けたましい轟音が渓谷に響く。


 四方八方、あらゆる方向に飛んでいく色とりどりの魔力弾がオークに衝突し、爆発。地上ではまるで花火のような光景が広がっていた。


「す、すごすぎるよ……」


「こ、これなんて漫画……?」


 ミーシャとアリスの二人はアレリアとアイナの最初の頃を思い出すような驚嘆の声を上げていた。というか、ちょっと引かれてる気がする。


 と、それはともかく。


 オークキングも含め、目の前にいるオークの軍団は全滅したようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る