第143話:助けてみたんだが②
「ユ、ユーキ……崖の上にオークキングがいるよ!」
ミーシャが焦った様子で俺に伝えてきた。
「オークキング?」
依頼内容を詳しく聞かずにギルドを飛び出してきたため、事情があまりよくわからない。
「この地域のオークのボス。オークキングがこの辺一体のオークを一箇所に集めてるんだよ。私も目の前で見たのは初めてだけどね……」
「なるほど。じゃあ、逆に言えばあいつさえ倒してしまえば……いや、先にあいつらの周りだけでも蹴散らすのが優先か……」
俺の攻撃力は足りている。上空から『火球』を落とすことで十分あの程度の魔物なら倒せるはずだ。
でも、本当にこれでいいのか?
「どうしたの?」
一瞬考え込んでしまった俺を見つめるミーシャ。
「いや……なんでもない。スイ、もう少し高度を落として近づいてくれ」
確かに、俺の攻撃力なら確実にオークを倒すことはできる。
だが……あの三人を巻き込まずにという条件がついてしまうと、途端に大丈夫という確信が持てなくなってしまった。
ハルカに必ずあいつらを生きて帰らせると約束した以上、反故にするわけにはいかないのだ。
結界魔法も魔物との距離が近すぎて三人だけを保護するのには使えない。
多少は余分に時間がかか流ことになるが、もちろん対策も考えている。
俺はアイテムスロットから通信結晶を取り出す。
全員に持たせてあるので、離れて飛行していても作戦を共有できる。
『アイナ、こっちは降下して距離を詰めてからアインたちの周りにいる魔物を吹き飛ばす。その間、周りにいる魔物の処理を頼む』
アイナは弓で離れた敵に攻撃できる。俺の魔法のように衝撃で周りを巻き込むこともないし、精度に関しても完璧だ。
アイナに時間を稼いでもらい、焦らずに安全を確保してから助けに行けばいい。そのような考えからの指示だった。
だったのだが——
『ごめん……無理。私の方ももう少し近づかないと……』
「どういうことだ?」
『この高度で飛びながらだと風が強すぎて……どこに飛ぶかわからないの。巻き込まずに魔物だけに当てる自信がないわ』
「そういうことか。……いや、そりゃそうだな。すまん」
上空の方が地上よりも強い風が吹く。それに加えてアイナはアースに乗っての移動中。しかも五百メートルほどの距離がある。
予測できない揺れや風でほんの数ミリのズレが惨事になってしまう。
もう少しだけ自力で耐えてくれ……。
俺には、そう願うことしかできなかった。
だが——異世界にもマーフィーの法則というものがあるのだろうか……。起こってほしくない時に限って運は言うことを聞いてくれない。
アインがオークの攻撃により武器を落としてしまい、絶体絶命の窮地に陥ってしまったのだ。
「ユーキ、あの三人を避難させればいい?」
焦りでどうにかなってしまいそうになっていたタイミング。アリスがそんなことを言った。
「え、そんなことができるのか?」
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