第135話:パワーストーンを作ったんだが①

「こんなに良いお家だとパワーストーンも良いのが欲しくなるわね」


「そうですね! とびきりのを用意しましょう!」


 アイナの言葉に、はしゃいだアレリアが反応する。


「パワーストーン?」


 知らない言葉だったので、思わず聞き返してしまった。


「ユーキはパワーストーンを知らないのですか?」


「ああ」


「本当に知らないの……?」


「え、結構常識だったりするのか?」


 アレリアとアイナは共にびっくりしたような顔で頷いていた。


 ミーシャとアリスの反応を確認しても同じだった。


 異世界に転生してから二ヶ月でもうこの世界のことについてはほとんど知ったつもりになっていたが、まだまだ知らないこともあるようだ。


「ユーキ、魔石はわかる?」


 アイナが俺の知識がどこまであるか探る質問を投げてくれた。


「ああ、それはわかる」


 魔石とは、魔物から取れる魔力が詰まった石。しかしほとんどがゴミのような代物で、価値のある魔石はほとんど採れない。 含有魔力の密度が高く価値のあるものは魔法兵器の核として使われるそうだ。


「パワーストーンっていうのは、魔石の中でも魔力が詰まったすごく質の良いものを加工して、ほんの少しずつ魔力を発散させることで滋養強壮効果が得られるようにしたものなの」


「疲れが取れるってことか?」


「そうね。疲れもそうだし、怪我の回復も早くなるわ」


「なるほど」


 一般人にとっては有用だが、疲れや怪我の多い冒険者にとっては特に重宝しそうな効能だな。


 魔石はてっきり魔法兵器のような危険なものにしか利用できないものだと思っていたが、思いの外平和的な使い方もされているようだ。


「パワーストーンってどれくらいの値段なんだ?」


「安いF級でも金貨百枚くらいはするわね。安いものの効果はあまり期待できないけど……」


 金貨百枚……日本円換算で約百万円ほどか。


 それで安いってどんだけだよ……。


「……高いものだと?」


「値段がつくものの中だと……A級が金貨一万枚くらいかしら」


 い、一億……ま、まあ今なら払えない金額ではないな、うん。


「でも、本当に良いものはほとんど市場に出ないから……そもそもお金があっても入手が難しいの」


「結構ハードルが高いな」


 お金さえ払えば手に入るならなんとでもしようがあるが、入手が難しいとなると手に入るかどうかは運になる。


「ん?」


「どうしたの?」


「ないなら、作るって方法もあるよな?」


「作る……?」


 四人ともピンと来ていない様子。俺も絶対にできると言えるほどの自信はなかったが、さっき覚えた『創造魔法』を使えばできるかもしれない。


 俺は、アイテムスロットから価値のない粗悪な魔石を取り出した。全体的に黒く濁っている。


 『創造魔法 Lv.1』を使用する。


 ちなみに、今の俺のレベルではまだスキルレベルは1が限界らしい。


 粗悪な魔石が光に包まれる。魔力がほとんど入っていないこの魔石に、許容量限界まで魔力を注入し、増幅させるイメージを脳内に描く。すると——。

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