第133話:素晴らしいデザインができたんだが

予約投稿が漏れており今日の更新遅れました!

すみませんー!

————————————————————————————


 ◇



「う〜む」


 リーシェル公国との調整を待つ間の一日。右手にペンを持った俺は机の前で頭を悩ませていた。


「ユーキ、どうかしたのですか?」


 アレリアが俺の顔を側から覗き込んできた。


 王城の中の空き部屋を割り振ることで、俺たち五人はそれぞれ別の部屋で過ごすようになった。なお、スイとアースは変わらす俺の部屋で過ごしている。


 しかし、なぜか俺の部屋にみんな集まってしまっている。部屋を分けた意味……あんまりないんじゃないか?


 さすがに五人と二匹ともなると、かなり人口密度が高い。ワンルームアパートに友達を集また大学生のような感覚に近い。


「家のデザインがなかなか思いつかなくてな」


 アレリアは俺の手元にある紙に目を落とした。


 紙には、俺の下手くそな一軒家のデザイン案が描かれている。


「前に言ってたシェアハウスの件ですか?」


「ああ」


 まだヴィラーズ帝国に行く前。アレリアとアイナの二人には王都に戸建ての新居を用意したいと話していた。


「しぇあはうす?」


「何それ美味しいの?」


 どうもシェアハウスという概念は異世界にはないらしく、説明していないミーシャとアリスは疑問符を浮かべていた。


「シェアハウスというのはですね、一つの家で何人か一緒に生活する住み方を言うのです。宿で一緒に生活するのとは違ってちゃんと一人ずつちゃんと部屋があるんですけど、キッチンとかお風呂とか、そういうものを共有する形の住み方なのです」


 一ヶ月前、俺がした説明を得意気に披露するアレリア。


 てか、よく覚えているな。とんでもない記憶力だ。


「……ということだ。説明が省けて助かる。ありがとな」


「えへへ」


 感謝を述べると、アレリアは嬉しそうに微笑んでいた。


「ふーん。どんな家にしたいの?」


 俺の描いたデザインをジッと見ながら呟くアリス。


「なんかこう、機能的でお洒落な感じ……だな。スイとアースが飛び立てるよう屋上があって、家の中は外から見えない方がいい。でも、窓は多めで日光は入るようにしたい」


「なるほど……わかった」


 そう言い、ペンを走らせるアリス。


 何を書くのかと思えば、俺が描いていた家のデザインの手直しだった。


 「これ、どう?」


 俺が時間をかけて描いたデザインよりも、アリスがほんの十分ほどで描いたデザインの方が洗練されており、かつ綺麗だった。


 少し悔しい……と思いつつも、これまで絵と向き合ってきた時間が丸っきり違う。さすがはアリスである。


 外観は王都の住宅に馴染んでいるかつ、先進的さも兼ね備えた俺のイメージ以上の出来だった。


 次に、機能面を確認する。


 一階はリビングルーム、キッチン、ダイニング、パントリー、客間、水回り一式。


 二階は六部屋。そのうち五部屋は五人それぞれの部屋。あと一つは物置になっている。


 地下室も想定しているらしい。パーティルームにするのも良いし、他にも何か良い使い方があれば何にでも転用できそうだ。


 屋上もただの発着場ではなく、テラスが描かれている。休みの日はバーベキューをしてみても良いかもしれない。


 家の周りには高めの塀が設けられている関係で中は見えないが、吹き抜けの天井に加えて真ん中に中庭があるおかげで採光にも配慮されている。


 廊下には収納がバッチリ用意されているので、過ごすうちに物が増えても対応できるだろう。


「アリス姉さんすごいです!」


「これすごくいい! 住んでみたいって思っちゃった」


「うんうん、こういう家いいと思う!」


 アレリア、アイナ、ミーシャの三人ともが大絶賛だった。


 そして、もちろん俺も同じ。


「まさに俺が形にできなかった理想の家だよ。本当にありがとな」


 そう言い、アリスの頭を撫でる。


 嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といった表情で『えへへ……』と頬を緩ませるアリス。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る