第132話:様子を見に行くことにしたんだが②

「怪しい点はないが……綺麗すぎるな」


「やはりそう思うか」


 レグルスも同じように思っていたらしい。


 人間はそう簡単には変わらない。アニメや漫画の世界では何かきっかけがあれば人は変われると描かれるが、現実はそうではない。良くも悪くも。


 一人や二人ならともかく、六人全員が心を入れ替えたとはとても思えなかった。


「これってどうやって調査したんだ?」


「王国の使者を通じて勇者の受け入れ国からヒアリングさせたたんだ」


「なるほどな……」


 レグルスが遣わせた使者が嘘の報告をしているとは思えない。問題は調査期間と、調査方法か。


 勇者の身柄を抱える各国の監視が杜撰……とまでは言わないが、上手く隠されている可能性がある。


 本当に心を入れ替えてくれているのなら喜ばしいが、もう少し詳しく調べたいところだ。できれば、俺の目で直接確認しておきたい。


「レグルス、俺が直接様子を見に行ってもいいか?」


 俺がいない間はまたレグルスに負担をかけてしまうことになるが、今は遠隔でも連絡を取ることはできるので、俺も最低限の仕事はできる。


 多少無理をしてでも様子を見に行けと俺の直感が訴えていた。


「ユーキが直接? そりゃそれが確実だが……そういう面倒ごとは俺が引き受けるぞ」


「レグルスは国王なんだ。他国に行って万が一のことがあったら困るし、それに……国王って肩書きがあると自由に動けないだろ?」


「まあ、確かにな」


 俺も『大公爵』というオズワルド王国貴族としては最高位の肩書きはあるものの、国王と比べれば外を出歩くことのハードルは低い。


「わかった。相手国への根回しは任せてくれ。各国周ることになるとは思うが、順番だけ教えてくれるか?」


「助かるよ。はっきり決まっているわけじゃないが、まずはファブリス……リーシェル公国に行こうと思う」


 リーシェル公国は王都から二千キロ離れた場所に位置する小さな国。エメラルドグリーンの素晴らしいビーチがあり、南国の国として人気が高い。


 イメージとしてはハワイやグアムみたいなものだろう。


「リーシェル公国だな、承知した。日程調整に十日ほど時間をくれ」


 異世界では手紙を届けるまでにどれだけ急いでも時間がかかるのは仕方がない。十日でもかなり短くなった方だ。


 通信結晶のおかげで使者の帰国を待つことなく報告を聞けるようになったのだから。


「十日だな、わかった。まあ……そのなんだ、一分一秒を争うわけじゃない。負担にならない程度で頼む」


 本人には気にしていないだろうが、ただでさえ忙しいレグルスに新しい仕事を割り込むのは少し気が引ける。


 この件は仕方がないが、そろそろ他の仕事は上手く割り振って国王を休ませる仕組み作りが必要になりそうだ。

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