第127話:帰国の準備を始めたんだが
◇
それからの一週間。
この間、俺は商業エリアに遊びに行ったり、アリスの漫画を読んだりなど帝都での生活を満喫した。
アリスは未だに城の中からは出られないが、一度部屋の外に出たことをきっかけに少しずつ活動範囲を広げている。
リビングルームで遅めの朝食を囲んでいるのだが、そこにはアリスの姿もある。
俺の隣で無言でサンドイッチを口いっぱいに頬張るアリス。リスみたいでなかなか可愛らしい。
ユリウスさん、リリスさんも以前よりニコニコしているように見える。
前世から通して考えても、今が一番幸せかもな。
いつの間にか、俺はこの生活をずっと続けたいと思うようになっていた。でも、そういうわけにもいかない。
俺にはレグルスと一緒に王国の統治をしなければならないという役目があるし、勇者関連の懸念解消は急務の課題。
「そろそろ王国に戻ろうと思っています」
俺がそう口にすると、この場にいる全員の注目が集まった。
「そうか……もうそういう時期か」
ユリウスさんは寂しそうに漏らした。
俺は席を立ち、ユリウスさんとリリスさんの前へ。
「本当に、お世話になりました」
「とんでもない。またいつでも来てくれ」
俺の肩に手をポンと乗せるユリウスさん。
「賑やかで良い時間だったわ。ユーキ君が来てくれたらアリスも喜ぶと思うわ」
チラッとアリスを見るリリスさん。
アリスは何を思っているのかわからないが、ここにいる誰よりも寂しそうに見えた。
「アレリアは当然として……ミーシャもユーキ君についていくんだな?」
「うん」
ニコニコ顔でミーシャが答えると、俺の肩に手を伸ばすユリウスさん。
「くれぐれも大事にしてくれよ……」
「も、もちろんです……」
これはおいそれと怪我もさせられないな……と乾いた笑いが出てくる。
「じゃあ、王国に戻る準備をしますね!」
早速荷造りをしようと意気揚々なアレリア。
「そういえば、冒険者って何を持っていけば良いの?」
「持っていきたいもの全部持っていって大丈夫よ」
アイナが答えると、ミーシャの顔には疑問符が浮かんでいた。
「全部って……荷物が多いと邪魔になるよね?」
ミーシャの言う通り、一般的に冒険者が持ち歩く荷物は大きめのバックパック一つに収まる程度。
これ以上の荷物だと移動の際にかなりの重荷になる。
しかし、アイナは静かに首を振った。
「ユーキの不思議な魔法で無限に持ち運べるから気にしなくていいの。あれすごく便利」
「へえ〜! ユーキ君ってそんなこともできたんだ!」
キラキラと羨望の眼差しを向けてくるミーシャ。
「ま、まあな」
アイテムスロットの容量が無限かどうかは不明だが、気にする必要がないのは確かだ。
しかしこれをいいことにアレリアとアイナが余計な荷物を捨てずに保管するのでごちゃごちゃになってしまっている。
ここにミーシャの荷物も入るとなると、行方不明にならないように注意しないとな……。
俺はアイテムスロットを開き、『タグ編集』ウィンドウ起動。記憶を頼りに整理整頓したのだった。
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