第98話:いきなり出てきたんだが②

 ミーシャ第二皇女に関しては、歳相応にややお姉さん感がある見た目をしている。


 アレリアと髪色は同じだが、瞳は父親譲りのルビーのような赤色。


 そして、どうでもいいことだが胸はかなり大きい。


 アレリアとアイナの中間くらいある。


 つまり同じくらいだ。


「ねえねえ、そんなことよりユーキ君とアレリアはどんな関係なの?」


 ミーシャが身を乗り出して興味津々に聞いてくる。

 

 なぜかニヤニヤしている。


 なるほど、こういうタイプか。


 このタイプのあしらい方は心得ている。


「後でお話ししますが、特別なことは何もありませんよ。俺とアレリア、隣のアイナで冒険者をしています。仲間であり、友達……ですかね」


「ふーん、そうなの」


 ニヤニヤ顔から一転して意外そうな表情になった。


「ミーシャ様は妹想いの良いお姉さんですね」


「妹想いって……! ふっ、よく言われるわ」


 嬉しそうに笑うミーシャ。


 よし、これで上手く面倒な質問を躱せたな。


 などと思っていると——


「でも、ミーシャ様は余計よ。そういう呼ばれ方嫌いなの。ミーシャでいいわ。あと——」


 言いながら、向かい側の席から、俺の隣に近づいてくる。


 眼前まで顔が近づいた。


 ちょっと怖いんだけど……?


「——敬語も禁止ね」


「え? あ、はい……わかりまし……わかった」


「うん、それでいいよ」


 一転して、天使のような笑顔で微笑むミーシャだった。


 なんで敬語禁止……?


「ミーシャお姉様は皇族扱いされて距離を置かれるのが嫌いなんです。特に同じくらいの歳だと」


「なるほどな。でもアレリアはいいのか?」


「私は特別みたいです」


「普通逆だよな……?」


 やれやれ、これはまたよくわからないお嬢さんだ。


「そこの銀髪の——アイナ! そう、あなたもね」


「え、ええ……わかったわ」


 まあ、アイナに関しては身分的に似たようなものだから分からなくもないか。


「ミーシャお姉様」


 会話が途切れたタイミングで、アレリアがミーシャに声をかけた。


「なあに?」


「アリスお姉様はやはり怒っているのですか?」


 アリス——アリス・ヴィラーズのことだろう。


 ヴィラーズ帝国の第一皇女。アレリアたち三姉妹の長女にあたる。


 ほぼ家族総出でアレリアを迎える中、一人だけ来なかったのだから、俺も実はそんな風に想像していた。


 アリスの名前が出ると、ミーシャの顔がやや曇った。


「うーん、そうじゃないと思うけど……アリス姉さんは昔からそうじゃない」


「そうですね……」


 事情はよくわからないが、不仲だということは伝わってきた。


 あまり他所の家庭事情に首を突っ込むのは良くないので、何も言わないことにした。


 こうして話しているうちに、帝城に到着したようだった。

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