第67話:攻略法を見つけたんだが
魔法書は全部で五冊。
表紙の色は属性を示しており、
赤=火属性。青=水属性。黄=地属性。緑=風属性。黒=闇属性。
このようになっていた。
灰色の本は魔法書とは関係がないらしく、サラッと見た限りでは歴史やら地図が描かれているのみだった。
「まずは、試しに火属性」
俺は赤の本を開いた。
赤本というと受験勉強を思い出して『うぇっ』となるが、我慢して読み進めた。
この魔法書から得られる魔法は『エンチャント・イグニス』というものらしい。
効果は、火属性を扱えるようになり、さらに火属性が強化される。
イグニスっていうのはラテン語で火って意味だっけ。……うろ覚えなのであまり自信がないが。
試しに、剣を抜いてみる。
そして、新しく覚えたエンチャント・イグニスを使ってみる。常時発動しておけるようで、意識的に解除しない限りは効果が持続するみたいだった。
「剣の周りに炎が……ユーキ、熱くないのですか!?」
「ほんのり温まるくらいの感じだな。俺の魔力が帯びているだけだから、火傷はしないって理屈みたいだ」
「うぅ……暑いよー」
俺の肩に留まっていたスイが俺から距離を取った。
「ああ……悪いな。ちょっと斬撃だけ試すからもう少しだけ離れていてくれると助かる」
「わかったー……」
窓の外から、火属性のフレアを使ってみる。
フレアは本来無属性の攻撃魔法だが、スイが俺の配下に加わったことで水属性が使えるようになった時と同じように、問題なく使えるようになった。
それだけじゃない。火属性が強化されることで、同じ魔力量のフレアでも攻撃力が高くなっていた。
だいたい魔法書がどういうものなのかわかった。
俺は窓から戻ってきて、手に持っていた本を閉じて机の上に置いた。
その瞬間、意識したわけではないのだが、魔法の効果が切れた。
「なかなか良いアイテムだとは思うんだが、前衛で戦うには無理があるな。本を常に携帯しながら戦うのは無理がある。後衛の魔法使いならアリっちゃアリなんだが——」
俺が後衛に回ったとして、前衛がアレリアだけになるというのは心許ない。
普通のパーティは後衛より常に前衛が多いものだ。
タンク役を新たに迎えるという手もあるにはある。
だが、命を預けるに足る仲間を見つけるのは簡単なことじゃない。いますぐに役立つものではなさそうだ。
「それって私が使っちゃダメなの?」
アイナが尋ねてきた。
弓使いは基本的に後衛なのでアイナが使えるというならもちろん渡そう。
だが——
「それができればベストなんだが、これ読めるか……?」
「……無理。わけわかんない」
「だよな……。となると現状は俺しか使えないわけだ」
念のため、残りの水属性・地属性・風属性・闇属性の魔法書も試しておく。
「どれも問題はないな」
「使いこなせれば絶対強いはずなのに勿体ないです……」
「まったくその通りだ。何か画期的な方法があればいいんだが——まあ、仕方ないか」
俺は、アイテムスロットに本を投げ入れた。
今のところは埃を被っていてもらおう。使える時になったら役立ってもらう。
そうだな、アイナが古代文字を覚えてくれれば役に立つこともあるかもしれない。
何年後になるか分からないが……。
「ユ、ユーキ……!?」
「ん? どうしたアイナ」
「どうやったんですか!?」
「なんだ、アレリアまで。俺をからかう遊びでもやってるんじゃないだろうな?」
「違います! 剣、聖剣を見てください!」
「聖剣?」
言われた通り、手元の聖剣を見ると、最後に試した闇の魔法書の効果が持続し、聖剣の周りを闇が渦巻いていた。
「……え、あれ?」
手元には、もちろん魔法書は持っていない。
そう言えば、正確には『魔法を使うには、魔法書を所持している必要があります』って書いてあったっけ。つまり、アイテムスロットに入れたままであっても、所持しているとみなされるってことなのか……?
「ってことはもしかしてだが——」
「な、なにこれ!?」
「火・水・地・風・闇……なんの属性なんですか!?」
全ての魔法書を同時に所持していれば、全ての属性を同時に扱うこともできる——
ふと思いついた仮説だったが、できてしまったみたいだ。
これならほぼ全ての属性を脳死でハンティングできちゃそうだ……。
「もしかして……俺、攻略しちゃった?」
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