おれはあんたの


おれはあんたの

お爺ちゃんじゃないから

おれはあんたの

お爺ちゃんじゃないから

だから

おれはあんたとセックスしてもいいのさ

だっておれはあんたの

お爺ちゃんじゃないからね

もし

おれがあんたの

お爺ちゃんだとすると

さすがにセックスするのはやばすぎだと思う

でも実際には

おれはあんたのお爺ちゃんじゃないから

セックスしても良い

おれはあんたのお爺ちゃんじゃないから

あんたに無許可で中出ししたって構わない筈さ

「………ところであんたは誰なんだ?」

性行為が終わったあとおれは尋ねた

何故ならおれはあんたのお爺ちゃんじゃないからね

ベッドの上でたゆたう風

季節は夏だった

何処かの家の庭でブランコが揺れた

頭は完全にいかれていた

だから心臓は脈を打つのをやめるべきだった

卒業すべきだった

生きることを

だが意味も無くただだらだらとそれは延長した

記憶喪失は進行中

おれは一体、誰なんだ?

曖昧な記憶の海に沈み

顰めっ面でスイカグミを噛んだ

目の前のあんたがようやく口を開いた

「あなたは、わたしのおじいちゃんよ」

「ああそうなんですか」

おれは答えた

独りでビールを注いで勝手に飲み干した

つまみはカステラ

そうか

おれは全てを思い出した

おれはあんたのお爺ちゃんだったのだ


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る